2021.09.24

食べる

【訪ねてきました卵の生産現場】新鮮卵を毎日お届け!消費地にある養鶏場が伝えたいこと

東京都府中市で唯一、経営を続けてきた高野養鶏場。消費地内にあるがゆえ新鮮な卵を提供できる利点を活かすだけでなく、養鶏の様子を地元の子どもたちに伝えてきました。生きものが身近にある暮らしの大切さを高野昌典さん、母のサト子さんに伺いました。



卵の配達は卵色のワゴン車で!

高野養鶏場では、午前中に産まれた卵を午後に集荷・選別し、翌日の午前中には顧客に配達しています。

配達に使っているのは、黄色っぽい「卵色」のワゴン車です。


プリプリつやつやの高野養鶏場の卵。この黄身と同じ色をしたワゴン車で、配達します。

「卵を配達する車だから卵色にしました。けっこう目立つから、宣伝にもなるでしょ。配達中はできるだけ卵に振動が伝わらないよう、慎重に走ります。卵が振動でゆすられると、黄身と白身が混ざってしまって、品質的にもよくないんですよ。鮮度のいい卵をベストな状態でお客さんに届けたいからね」(昌典さん)



輸送リスクが最小限に抑えられる。これも消費地に近い利点なのでしょう。



「豆腐に旅をさせるな」と言われますが、卵もあまり旅をさせてはいけないんですね。

養鶏は子育てと一緒



「車の振動なんて、へっちゃら!」と言いたくなるくらい、高野さんちの卵は黄身も白身も盛り上がってプリプリしています。

そのプリプリさたるや、黄身と白身を菜箸で混ぜ合わせるのが大変なくらい。



鮮度のよさも、もちろん理由のひとつですが、それだけではありません。


高野養鶏場ですくすくと育つひよこ。とってもかわいいです。

「うちでは、ひよこから育てています。子どものころから体をしっかりつくるように育てることで、健康な鶏になるんです。鶏が元気じゃないと、卵もおいしくなりません」(昌典さん)

鶏の成長にあわせて、餌の種類も4段階に分けて与えています。

遺伝子組み換えの穀類が混ざった配合飼料を使わないのも高野養鶏場のこだわり。



「日々の健康は食事から。鶏も一緒ですよ」と昌典さん。鶏への愛情を感じます。

ひよこから大切に育てた鶏が卵を産むようになってからも、日々の健康チェックは欠かせません。



「卵を産む頻度や、餌の食いつき加減などで鶏たちの健康状態を判断しますが、一番気をつけて観察するのは眼。眼がトロンとしている子はあきらかに体調がすぐれない。とくに夏場は暑さで元気がなくなるので、ときどき水浴びをさせています」(昌典さん)


飼育ケースから頭をのぞかせる高野さんちの鶏たちは、どれも凛々しい目をしています!

天窓を設置した鶏舎を南向きに建てているのも鶏たちのため。適度に日光を鶏舎内に入れる工夫です。



「その日の気温や湿度によって鶏舎の窓を開閉するのも大事な作業です。鶏には、できるだけ心地いい環境で過ごしてもらいたい。養鶏は子育てと一緒なんですよ」(昌典さん)

生きものが身近にいる暮らしから気づくこと

東京都府中市で1926年から養鶏を営む高野家ですが、もともとは庭先で鶏を飼う「庭先養鶏」から始まりました。

「当時の府中では鶏を飼う人が多くて、『人口10万人、鶏も10万羽』と例えられるほどでしたね。養鶏を専門にしている大きな養鶏場も20か所ほどありました」(サト子さん)



しかし、今でも養鶏を営むのは高野養鶏場だけ。府中市内の宅地化が進むと同時に、養鶏場は次々に閉鎖されていきました。

養鶏仲間が減っていくなか、経営を続けてきたのは大変だったはず。



「住宅街が近いので、臭いには気を配っています。でも、どんなにケアしても完全に無臭にすることは難しいんです。だから、見学に来た子供たちにはこう声をかけるんです。『この臭いがあるから、おいしい卵が食べられるんだよ』ってね」(サト子さん)



鶏はどんなふうに育てているの? 卵ってどうやって産まれるの? そんな素朴な疑問にこたえるべく、高野養鶏場では地元の子どもたちの体験学習も受け入れてきました。

消費地にある養鶏場だからこその取り組みとも言えるでしょう。



卵は工業製品ではありません。店頭に並ぶ卵の向こうには、さまざまな物語があります。

元気な鶏がいて、その鶏を大事に育ててくれる農家がいることで、私たちは卵を食べることができるのです。



「生きものが身近にいる暮らしから学べることは、とても多いんですよ」(サト子さん)

人々が暮らす街と、養鶏場をはじめとする生産現場はどんどんと遠くなっています。新鮮なものがすぐに手に入るという単純なことだけではない、都市農業の重要性を高野養鶏場は示しています。



高野さん一家が愛情込めて育てる鶏の卵は高野養鶏場内直売コーナー、JAマインズ直売所(マインズショップ西府店・マインズショップ調布店・マインズショップ狛江店・府中特産品直売所)にて購入することができます。

贈答用も販売しており、遠方まで送ることも可能。気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。

高野養鶏場

高野サト子さん

高野養鶏場の創業は1926年。府中市内にはかつて養鶏場が20か所ほどあったが、今でも養鶏を営むのは高野家だけ。卵を産む成鶏を年間で約3000羽育てている。消費地に近い養鶏場であるため、産まれた卵は翌日には顧客に届ける。品質だけでなく、鮮度のよさも折り紙付き。養鶏場には直売所も併設されており、卵は卵自販機で販売。自家製の鶏糞堆肥で育てた野菜も販売している。
高野養鶏場 
住所:東京都府中市南町6-14-1 
電話:042-361-9377

写真/津田雅人 取材協力/JAマインズ

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