2021.10.21

働く

【食と農の資格】食育ソムリエってご存じ?気になる仕事内容について詳しく聞いてきました

農産物直売所に行くと、「食育ソムリエ」という文字を目にすることがあります。食育ソムリエとは農産物の専門家。具体的にどんな仕事をしているのか、埼玉県川越市にある人気の農産物直売所、「あぐれっしゅ川越」で働く4人の食育ソムリエの方々に話を伺いました。



今回お話を伺った食育ソムリエのみなさん。右から、小谷野路子さん、奥住則子さん、須永和子さん、小野広子さんです。



オレンジ色のスカーフと胸につけたワッペンが、食育ソムリエのしるしだそう。

「お客様が一目でわかるようにしています」と教えてくれたのは、食育ソムリエ歴12年目のベテラン、小谷野さんです。



ソムリエとは、レストランでゲストの要望に応えてワインを提供する人のこと。ワインに詳しいだけでなく、料理との相性や接客についての深い専門知識が求められる仕事です。

では、食育ソムリエとはどんな仕事なのか、詳しく聞いてみましょう!

地産地消を最前線でコーディネートするのが食育ソムリエの役目

食育ソムリエとは農産物直売所で、幅広い知識と発信力を持ち、生産者と消費者の架け橋となる「食」と「農」のプロのこと。


あぐれっしゅ川越の店内には、食育ソムリエ認定証が飾られています。

その仕事内容は、スーパーのスタッフとどう違うのでしょう?

「品出しやレジ打ちをするだけでなく、農産物の魅力を消費者に直接伝えています。例えば、地元産の野菜をたくさん買っておいしく食べてもらうために、選び方や保存法、下ごしらえの仕方や栄養などを発信するほか、レシピを考案してお客様に伝えたり、反対にお客様の要望を聞いたり。いわば地産地消を現場で推進するコーディネーターなんです」(小谷野さん)



食育ソムリエの資格取得を目指す養成講座が始まったのは2005年。ちょうど”地産地消”の大切さが見直され始めた頃です。

そして今、あらゆる場面で”持続可能(SDGs)な社会という言葉が注目を浴びていますが、これは食と農についても言えること。食育ソムリエは、野菜全般の知識だけでなく、地域の野菜の魅力も発信することで、地場農畜産物の消費拡大を図り、地元の産業を支えていくという大切な役目も担っています。

店内で働いていると、お客さんが寄ってきて「どれがいいのかな。あなたに任せるから、いい野菜を選んでくれる?」なんて頼まれることもあるそうですよ。



それもそのはず。直売所にはさまざまな野菜が並んでいます。じゃがいも一つとっても、おなじみの男爵だけでなく、とうや、アンデスレッドなどといった品種があります。



トマトの売り場面積も広くて、選ぶのがたいへん。



かぼちゃは、形もさまざまな珍しいものがありますね。農産物の種類がこれだけ豊富だと、専門家が必要になってくるのも頷けます。



「旬の時期の産直所には、びっくりするほどたくさんの量の野菜が並びます。それとは反対に、出荷量が少ないためなかなかお目にかかれない珍しい地場野菜や伝統野菜のほか、農家の“ただ今栽培チャレンジ中”の野菜が試験的に置かれたりもするんです。スーパーでは見られない野菜に出会えるのが直売所の魅力ですが、消費者にとってはなじみのない野菜ばかりだと、どれを買ったらいいのかわからなくなることもありますよね」と語るのは、須永さん。


「私はとにかく根っからの野菜好きで、いろいろな野菜に興味があったんです。前の仕事をやめた時期にちょうど食育ソムリエという資格を知って、私にぴったりだと思って勉強しました」(須永さん)

野菜の種類がたくさんありすぎて迷ったときは、食育ソムリエの出番。

店内には、野菜ごとにその特徴や食べ方、簡単なレシピがついています。



中には持って帰れるようになっているレシピも。これはありがたいですね。



店内にはこうした手書きのPOPがそこかしこに。このPOPを作成するのも、食育ソムリエの仕事。


このようなレシピのストックが、なんと100種類ほどあるそうですよ。

レシピはあぐれっしゅ川越の食育ソムリエみんなで考案、試作し、感想を言い合います。気をつけているのは、とにかく簡単でおいしいこと、店でレシピをパッと見るだけで味がイメージできること。見た人が、「これを作りたい」とその野菜を買ってくれることが理想だそうです。

そうしてできたレシピを、手書きで一生懸命書いているのは、4人の中では一番最後に食育ソムリエになったという小野さん。



もともと「あぐれっしゅ川越」の常連客で、やはり野菜好きだった小野さんは、毎日野菜に囲まれて仕事ができて、しかも野菜についてのいろいろな知識が得られるなんて最高!と、あぐれっしゅ川越のスタッフとなり、食育ソムリエを目指すようになったそうです。

「私がおすすめした野菜や、考えたレシピを実際にお客様が試してくれて、あれ、おいしかったよと言われたりすると、やりがいを感じます」(小野さん)


左端が店長の杉山さん

あぐれっしゅ川越の店長、杉山伸明さんは食育ソムリエについてこう話します。

「POPだけでなく、季節に合わせて特設コーナーを作ったり、レシピに必要な調味料を野菜といっしょに並べたり。食育ソムリエは農産物の魅力を発信するためにいろいろな工夫をしているんです。消費者の気持ちもわかるので、すごく助かっていますね」(杉山さん)

どうやら食育ソムリエは、野菜好きの人に最適な仕事のようです。毎日いろいろな野菜に触れることができるのと、生産者と消費者、両方の話を聞けるのでとても勉強になるといいます。

「そうなんです。私は野菜も好きだけど、実は接客がもっと好き(笑)。野菜と果物と接客のプロになるのが私の目標です」と笑顔で話してくれたのは、奥住則子さん。



「栄養や保存法といった情報だけでなく、調理を試して発見したことを自分の言葉で伝えられれば。お客様も顔見知りの人が多いので、すごく楽しいです。普段あまり会えない生産者とも、直接いろいろな話を聞くこともできるようになりました。この野菜ならあとどれくらいの期間手に入るよ、もうすぐこんな野菜が出るよ、こういった情報はすごく貴重。生産者しか知らない情報を消費者へ届ける、食育ソムリエはまさに、生産者と消費者の懸け橋なんです」(奥住さん)



食育ソムリエ養成講座は通信教育なので、自分の好きな時間に学べるのだそう。農産物の知識だけでなく、POPの作り方や接客のコツなども身に着けることができます。



今の4人の願いは、旬の野菜や地場産野菜を使ったおすすめ料理の試食会を開くこと。コロナ禍になる前は定期的に開催していて、来場者からも人気があり、売り上げにも貢献していたそうです。早く再開できるといいですね。

ほかにも月に一度各店舗から食育ソムリエが集まって開かれるソムリエ会議に参加したり。その時期の旬の野菜の特徴や保存法などの勉強のほか、お互いの店の情報交換も欠かしません。

みなさん、とにかくすごく楽しそうに働いていて、仲が良さそうなのも印象的でした。

こんな笑顔で選んでくれた野菜なら、おいしいこと間違いなしですね!



食育ソムリエはあぐれっしゅ川越だけではなく、全国の直売所やファーマーズマーケットで活躍中!直売所やファーマーズマーケットをインターネットで検索すれば、食育ソムリエがいる店舗が明記されていることも。

ぜひ直売所へ行って、旬の農畜産物をよく知るプロに会いに行ってみましょう!



小谷野さん、奥住さん、須永さん、小野さん!ご協力ありがとうございました!

あぐれっしゅ川越

〒350-0853
埼玉県川越市城下町45-3
駐車台数 260台
電話 049-227-0831
営業時間 9:00~17:30
定休日 第3水曜日(祝日の場合営業)
ウェブサイトはhttps://www.ja-irumano.or.jp/market/kawagoe.html

写真/松木雄一 取材協力/JAいるま野

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