2021.09.27

食べる

【パッションフルーツってどんな果物?】気になる食べ方から、栄養や名前の由来まで生産農家に聞きました!

最近スーパーなどでもちらほら見かけるパッションフルーツ。どんな果物なの?どんなふうに食べたらいいの?なんて、気になってる人も多いはず。さわやかな酸味と甘みが楽しめる、パッションフルーツの特徴や栄養、意外な名前の由来まで、農家がじっくり解説!名前の由来はびっくりすること間違いなしですよ~!


パッションフルーツを手にポーズを決めてくれる河井さん!サービス精神あふれる、優しい農業男子です!

パッションフルーツについて教えてくれるのは、東京都八王子市でパッションフルーツを育てている農家の河井豊さん。

八王子市では特産品としてパッションフルーツの栽培に力を入れています。南国のイメージが強いパッションフルーツですが、東京都内でも育つなんて、驚きです。

ビタミンたっぷりパッションフルーツ



パッションフルーツは南米原産。常夏のイメージがありますが、南は沖縄から、北は関東、東北エリアまで広く栽培されています。

「東京都内のパッションフルーツの旬は8月後半から9月いっぱい。今が旬のパッションフルーツには体にうれしいビタミンがたっぷりですよ!」(河井さん)

日本食品標準成分表(※)で、パッションフルーツの栄養を調べると、特に豊富なのは、葉酸、ナイアシン、ビタミンCといった成分。
(※データ:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

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葉酸は赤血球を作る働きがあり、ナイアシンは二日酔いの解消にも効果を発揮します。葉酸もナイアシンもビタミンB群の一種です。

果皮にシワが出たら食べてみて!果肉は種ごと食べられます

買ってきたばかりのパッションフルーツは表面がつるつるしています。

このまま食べても酸味があっておいしいですが、じつはパッションフルーツは常温に置くと甘みが増す果物。数日置いた食べどきの特徴として注目したいのが果皮に出るシワです。


左から追熟したシワの出たパッションフルーツと、購入直後のつるつるのパッションフルーツ。酸っぱめが好きな人は、つるつるもおすすめです。

「購入したら、写真のようにシワシワになるまで追熟させてから食べると、甘酸っぱさを存分に楽しめますよ」(河井さん)



そして、パッションフルーツを切ると、黄色いゼリー状の果肉のなかに種が入っているのが見えます。

種はどうやって取り除くの?と心配しなくても大丈夫。パッションフルーツは種ごと果肉を味わうフルーツなんです。

ジューシーで甘酸っぱい果肉と種のプチプチ感が、何とも不思議な食感でやみつきに!


生で食べるときはこの種の食感を味わって! 写真/石塚修平

すくってそのまま食べるのはもちろん、ヨーグルトやアイスとも相性抜群です。


写真/石塚修平

美しい花と、意外?な名前の由来も魅力

「パッションフルーツって、花もきれいなんでしょうね」というと、「今朝ちょうど咲いてましたよ」と河井さん。

「ほら、これです!」



あ!本当だ!美しい花が咲いています。

花びらは白いけれど、軸に近いほうには果実の果皮にも見られる紫色が映えてコントラストがきれい。

「パッションフルーツの正式名は、クダモノトケイソウ。よく見てみてください。めしべが3つに分かれていて、時計の長針、短針、秒針のように見えるでしょう?」(河井さん)

たしかに時計のようにも見えます。


「ベンツだ」と呟くカメラマン。確かにメルセデス・ベンツのエンブレムにも似ています!

正式名とは別に、そもそもなぜ「パッションフルーツ」と呼ばれているのでしょうか。

河井さんに聞くと、パッションフルーツの「passion」は、情熱という意味の他に「受難」という意味もある、と教えてくれました。



「このめしべの形が十字架にはりつけにされたキリストの受難の姿を現している、と、宣教師たちが中南米での布教活動に用いたことから、世界中でパッションフルーツと言われるようになったそうです」(河井さん)



「見てください。めしべの三角形はそのまま果実の形にもなってるんですよ」と河井さん。

確かに、果実はただの卵形ではなくて、ゆるやかな三角形になっています。

受難の形を示した花が実になり、実にもその形が引き継がれているなんて…。パッションだから、情熱の果物なのかな~なんて考えていましたが、花の形にちなんだ深い由来があったんですね。

一日しか咲かない花!農家は開花を逃しません

パッションフルーツの花にはハチ、アブ、カナブンなどが蜜を吸いにやってきます。受粉はこれらの虫たちがやってくれるのでしょうか。

「花をのぞくとカナブンが黄色い花粉まみれになってます。でも虫任せだと受粉の精度が落ちるので、人の手で人工授粉しています」(河井さん)

パッションフルーツの花はたった1日しか咲かず、昼前に咲いて夕方にはしぼんでしまうそう。



実をつけてもらうために、河井さんは毎日開いている花がないかチェックをし、見つけ次第人工授粉の作業をします。

「おしべを1本とって、めしべ3本にちょんちょんと花粉をつける。ちゃんと3か所に花粉をつけないとしっかりした実になりません」(河井さん)



広い畑の中で行う地道な受粉作業。どんなことを河井さんは考えるのでしょう。

「がんばれ! と花に語りかける日もあれば、めんどくさいな、あーあ、って思うこともありますね。でも延々と単純作業するの、そんなに苦じゃないんです」(河井さん)



花の後ろにちょうど、受粉後にふくらみはじめた果実がありました。こんなふうに少しずつ果実はふくらんでいくのですね。

「ふくらんで、色づいて、熟して自然に地面に落ちるまでには、受粉からだいたい60日かかります」(河井さん)

生産者が大切に手をかけて、大きく育つパッションフルーツ。見かけた際にはぜひ買ってみてくださいね。




販売先は、河井さんも所属する「八王子パッションフルーツ生産組合」で検索!
 



河井農園

河井豊さん

東京都八王子市で200年以上続く農家を承継し、就農して今年で9年目。大学卒業後、小中学校生向けの学習塾の塾講師となり、4年間勤務ののち就農。JA八王子パッションフルーツ生産組合所属。河井農園では米や野菜を年間約30品目育てており、農業はお父さん、お姉さんとともに行いお母さんは自宅での野菜販売や出荷をサポートする家族経営。河井さんは4アールの土地でパッションフルーツを育てている。

写真/津田雅人 取材協力/JA八王子

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