2021.10.09

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【都市部で父娘が営む梨農園】農業は一人じゃできない!子どもたちの農業体験や農業ボランティアなど地域を巻き込み、魅力を伝える「さとう園」に大注目

東京都国立市にある梨農園のさとう園は、閑静な住宅街の中にあります。「おいしい梨を育てるだけが、農業じゃないと思っています」と話す農園主の佐藤英明さんと娘の淑美(よしみ)さん。農園が街中にあるメリットを最大限に生かし、農作業体験やボランティアを受け入れ、各種イベントも催してきました。そんな佐藤さん親子に、都会で農業の魅力を発信する理由について、詳しく話を伺いました。



地域に寄り添う農業を目指して



一橋大学の大学通りを中心とした、きれいな街並みが続く東京都国立市。この落ち着いた住宅街の一角にさとう園があります。



この地で祖父の代から梨農家を営むさとう園。都市農業は、「消費者がすぐそばにいる」ことが強みですが、農地を管理するうえで住民への配慮が欠かせません。

農園主の佐藤英明さんは「都市部で農業を長く続けていくには、住民の理解なくしては難しい。たとえば、堆肥を散布したらすぐ耕運するなど、近隣に迷惑がかからないように作業を行います。農家も、農家でない人も、みんなが気持ちよく暮らしていきたいですから」と、話します。



淑美さんも、横でうなずきながら「農園に気軽に足を運んでもらおうと、イベントなどを開催しています。地域に向けて、農業の魅力を発信することも大切だと思うんです」と続けます。



さとう園では、地元の幼稚園や小中学校の農業体験の受け入れや、野菜を株ごと買ってもらい収穫を購入者に任せる「野菜の株売り」などを積極的に実施。農業を身近に感じてもらう取り組みを行っています。

農業体験が将来の消費者に繋がっていく



子どもたちを農園へ招く大きな理由がもう一つある、と英明さんは続けます。

「農園を訪れた子どもたちの反応はさまざまですが、樹になっているりんごが怖くて触れない子がいたり、生まれて初めて桃を食べた中学生がいたり…。子どものうちから果物を食べる習慣がなければ、大人になってからも果物を買おうと思わない。農業体験の場を提供することは、農業への理解を促進するだけでなく、未来の消費者を作ることにも繋がっていく、そう感じています」(英明さん)


4月上旬、梨の花が満開のさとう園。 写真提供:さとう園

農業体験のほか、ゲストティーチャーとして、小中学校での講演や、野菜栽培の指導なども行う英明さん。関わる子どもは年間約1000人になるといいます。最近では、国内の企業はもちろん、韓国、台湾などの海外からも農業体験に訪れることもあるそうですよ。

農園の強力なサポーター「援農ボランティア」


梨の生育状況を確認するため、袋を破る援農ボランティアのみなさん

地域の方々や子どもたちの農業への理解を深める活動はもちろんのこと、農作業もやはり大変な仕事。さとう園では援農ボランティアも大活躍しています。


写真提供:さとう園

「梨は、春の花粉媒介から始まり、袋がけ、摘果、夏以降の収穫など、膨大な作業を短期間で行わなければなりません。忙しい時期は家族も総出で作業しますが、やはりパートやボランティアの方の存在が欠かせませんね」と英明さん。

この日もさとう園には、国立市の農業をサポートする「国立市援農ボランティア事業」に登録しているボランティア3名が、梨にかけた袋を破る作業のお手伝いに。



普段は団体職員として働く淑美さんも、収穫作業が忙しい時期は1週間休暇をもらって作業を行います。



「農業は1人ではできません。手伝ってくれるボランティアやパートの方々がいてくれて初めて成り立ちます。そこに地域の人も巻き込んでいくことが大切だなって、父の背中を見ると感じます。私は子どもの頃から農業に親しんでいますが、同世代の人は興味がない人も多いと思うんです。そんな同世代にもっともっと魅力を伝えていきたい。色々な人と協力して助けあいながら、この先も農業を守っていけたらと思っています」(淑美さん)



都市農業に型はなし! 自分にしかできないことをやる



さとう園で栽培している梨は、最も生産量の多い「幸水」や「豊水」のほか、希少な「秀玉」や「稲城」といった品種も。これらを市場を通さずに宅配便で全国に発送しています。


収穫したばかりの梨を予約ごとに箱詰め

「秀玉は、栽培に手間がかかるため、市場にはほとんど流通していません。でも、そういった珍しい梨を求める消費者もいます。そのニーズに応えるのが自分の役目だと思って。型にはまることなく、日々情報収集をしながら、自分にしかできないこと、新しいことを導入できたらと考えています」(英明さん)



いつも何気なく食べていた梨や農産物は、こうした作り手の熱い想いがあって生産されています。

梨農家の佐藤さんおすすめの品種や、梨のコンポートの作り方も公開中。こちらもぜひチェックしてくださいね!

さとう園

東京都国立市で、梨を栽培。「幸水」や「豊水」などの定番の品種のほか、東京都内でしか栽培されていない「稲城」や、全国でも珍しい「秀玉」などの希少種も出荷している。「さとう園」でとれる梨はすべて予約販売で、全国にも発送。Twitterでは、四季折々の生育状況や、梨の販売状況などを発信中。
さとう園 
住所:東京都国立市谷保1508 
ツイッター:https://twitter.com/nashi_sato?lang=ja

写真/研壁秀俊 取材協力/JA東京みどり

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