2022.01.03

働く

コロナ禍で注目【地域おこし協力隊って実際どうなの?】隊員を経てしょうが農家になった元デザイナーに密着!

コロナ禍がきっかけで、ライフスタイルを見直したり、地方への移住を考えていたりする方も多いのでは? そんな中、一定期間、地域に居住して「地域協力活動」を行う「地域おこし協力隊」が注目されています。でも、「実際にどんな活動をするの?」「応募方法は?」「将来は…」など知らないことばかり。そこで、実際に隊員として山梨県で活動し、その後しょうが農家になった手塚美砂子さんの体験談を交えながら、地域おこし協力隊を紹介します!

【画像を見る】「地域おこし協力隊」の元隊員に話を聞きました!



美術大学を卒業し、デザイナーとして活躍していた手塚さん。夫と子ども2人、家族で一緒に東京で暮らしていましたが、「周りに手助けをしてくれる人がいる環境で仕事をしながら、自然の中で子育てをしたい」と考えるようになり、出身地である山梨県南アルプス市に地域おこし協力隊としてUターン。現在はしょうが農家としてしょうがを栽培しながらジンジャーシロップの加工・販売をしています。

「移住を少しでも考えたことがあれば、ぜひチェックしてほしいのが地域おこし協力隊の制度です」(手塚さん)

Q.そもそも「地域おこし協力隊」とは?



A.地域おこし協力隊は2009年から始まった総務省の取り組みです。地方自治体が都市地域からの移住者を『地域おこし協力隊員』として任命し、農業・漁業への従事、地域の魅力PR、お祭りやイベントの運営など、様々な地域協力活動を行いながらその地域への定住・定着を図るのがねらいです。

2020年度は取組団体数(受入自治体数)が1,065団体、約5,500名の隊員が日本各地で活動しています。隊員の男女比は男性6割、女性4割で、幅広い世代の隊員がいますが、約7割は20~30代の若い世代というのが特徴です。

参考:総務省「地域おこし協力隊とは

Q.地域おこし協力隊の隊員には、どうやってなるの?



A.地域おこし協力隊に応募する大まかなステップは以下の通り。
一般社団法人 移住・交流推進機構(JOIN)ホームページなどで移住したい地域や携わりたい業務を探す
② 自治体ごとの応募条件など詳しい情報を集める
③ 希望着任地を決めて、応募書類を作成、応募する
④ 書類選考と面接選考を受ける
⑤ 採用されると晴れて地域おこし協力隊員に!

「わたしが応募した南アルプス市の地域おこし協力隊は“農業の担い手として起業及び地域への定住と就農を考えている人”を探していました。出身地だったから、ということもありますが、農業に関わる仕事がしたいというわたしの希望と一致していたので、南アルプス市に応募しました」(手塚さん)

毎年多くの人が隊員として活動していますが、応募したものの選考に通過できなかった、ということも珍しくありません。応募方法や応募条件などは、応募前にしっかり確認しておきましょう。

Q.具体的にどんな活動をするの?



A.隊員が現地で何をするかは、自治体や受け入れ先によって異なります。地域協力活動と言ってもその中身は地域によってさまざま。林業や漁業の担い手から、IT人材や伝統工芸の職人まで、自治体ごとの需要に合わせて幅広い分野で募集され、募集内容に沿った活動を行うことが求められます。

農業の担い手としての力量を見込まれ採用された手塚さんの任期は2年半。南アルプス市から受け入れ先の農家がいくつか提示され、その中から希望の農園を選び、農作業を手伝いながらそのノウハウを学びました。

「農業を皮切りに地域に関わる仕事を探したかったのと、加工など農作業以外のことも学びたかったので、果樹栽培とジャムの加工をする農家に受け入れてもらいました。最初のうちは、教わりながら農作業をこなす日々でしたが、少しずつ地域を理解し、人との交流を深めることができました」(手塚さん)



隊員として受け入れ農家を手伝う傍ら、空いている畑を使わせてもらい、しょうがの栽培も始めたそう。

「人と話をしたり、地域の可能性を探る中で『自分でしょうがを育ててそのしょうがでジンジャーシロップを作って販売したい』という夢を見つけました。そこで、任期中にしょうが栽培をスタート。その他にも、地域の商工会へ起業について相談しました。協力隊の期間は地域で暮らすために何ができるかを探して準備する期間でもあるので、受け入れ農家で勉強しながら、任期後の準備を進めていましたね」(手塚さん)

Q.任期中の収入ってどうするの?



A.地域おこし協力隊員には任期中に活動費が支給されます。活動費については、自治体や活動内容によって異なるため、詳しくは各地域おこし協力隊の募集要項を確認してください。また、任期後は起業希望者向けの補助制度もあります。

「わたしが隊員として活動した南アルプス市の場合は、毎月一定の報償費(活動費)がもらえました。わたしが地域おこし協力隊に応募した理由のひとつも、定期的にこの報償費が得られるから。子連れ移住だったので助けられました。また、地域おこし協力隊に参加した後も、その地域で農業を始めたり起業すると100万円支給されるのですが、このお金は起業の資金に充てることができました」(手塚さん)

参考:総務省「地域おこし協力隊の概要

Q.任期が終わった後はどうするの?



A.協力隊の任期後は現地で就職、もしくは起業して移住を続ける人もいれば、任期が終わるとその地域を離れる人もいます。

2020年度のデータでは協力隊の任期終了後、約6割がその地域に定住し、生活しています。定住者のうち約4割が就業、約4割が起業、約1割が就農・就林等。レストランやカフェなどの飲食サービスやゲストハウスなどの宿泊業で起業する人から、酒造など事業承継する人までさまざまです。

「わたしの場合は2020年3月31日に任期が終了し、翌4月1日にジンジャーシロップ加工販売会社を起業しました。現在は畑を借り、しょうがを約10アール栽培し、地域の加工施設でジンジャーシロップに加工して、インターネット販売しています。栽培も加工も自分一人でやっているので大変ですが、規格外のフルーツを使ったシロップ開発を通して地域の農家に喜ばれていて、やりがいを感じています。より多くの人にわたしのシロップを知ってもらうため、今後は広報活動に力を入れたいです」(手塚さん)

過疎・高齢化の地域では、求人自体が都市部のように多くはありません。任期を終えた後の仕事や生活のことは、任期中に考えておく必要がありそうです。

参考:総務省「令和2年度地域おこし協力隊の定住状況等に係る調査結果



「わたしが地域おこし協力隊に参加してよかったのは、地域の人とつながりを作りながら生活基盤を整えられたことと、毎月の報償費が得られたこと。地域おこし協力隊にはサポートデスクもありますし、隊員同士のネットワークもあります。わたしも、隊員のネットワークを活用してしょうが栽培を教わりました。もし、今の働き方を変えたい、地方で生活したいと思っているなら、ぜひ地域おこし協力隊への参加も検討してみてください」(手塚さん)

気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。

手塚美砂子さん

美術大学を卒業後、デザイン関連の仕事に従事し、夫とともに東京でデザイン会社を立ち上げる。ふたりの子どもを育てながら、今後の生き方を模索していた2018年、実家が果樹園を営む山梨県南アルプス市へのUターンを決めて就農。自身はしょうが栽培とジンジャーシロップの販売事業、夫は東京でコンサルティング会社を経営し、2拠点生活を送っている。

ショウガシロップのサイト https://soil-drink.com/
手塚果樹園サイト http://tezuka-farm.com/

写真提供/手塚美砂子 取材協力/JA南アルプス市

Pick up

Related

Ranking