2021.10.13

働く

東京で南国果実パッションフルーツを栽培!塾講師から祖父の背中を追い華麗なる転身を果たした農業男子・河井さん。じつは芸人顔負け!?の素顔にも迫ります

河井農園の河井豊さんは塾講師の経歴を持つ農業男子。東京都八王子市の新たな特産品として注目を集めているパッションフルーツを栽培しています。なぜ農家に?どんな思いで育てている?明るく気さくな河井さんに密着し気になるアレコレを聞いてきました!最後まで読んだ人だけが見られる、とっておきの芸もお見逃しなく!




毎年うまくいくとは限らない農業の魅力

八王子生まれ、八王子育ちの河井さんは、パッションフルーツを育て始めて今年で5年目。



もともと祖父の實(みのる)さんが農業をしていて、跡を継ぐ形で農家になったそう。

「農業って育成ゲームをしてるみたいだなぁ、って思います。うまくいってもうまくいかなくても、なんでだろうなって考えなきゃいけない。昨年はよくできたけど、一昨年はうまくいかなかったなら、その理由は何だろう、どこが決め手になったのか、など常に見極める力が求められるんです。努力が全て報われるわけでもないんです」(河井さん)



理科の教師を目指し、大学では緑化開発などの環境都市政策を学んだ河井さん。卒業後は小中学生向けの学習塾に就職し、数学や理科を教える選任講師に。

働いて4年ほど経ったころ、實さんが体調を崩しました。

「今のうちにおじいちゃんにくっついて、農業をできるようになったほうがいいかなと思って」と、農業の手伝いをするように。


パッションフルーツは熟すと自然に実が落ちるため、拾って収穫します。

勤務していた塾を辞めて、實さんに「今日から農業しようと思う」と言うと、「おう、それはいいな。着替えてきな」と言われたそう。その日を境に、農業に本格的に取り組むようになりました。

亡き祖父からの一言に「何事もそうだなぁ」と思った

4年前に他界した祖父、實さんの印象的な言葉があるといいます。

「キャベツの苗を植えているときって、3000、4000という膨大な数を植えるんです。まだ植わってない畑を眺めてため息をついていると、祖父がぼそっと『やってりゃ、終わんべ』とつぶやいて。なるほど、何事もそうだな、やってれば終わりがあるからがんばろうと思いました」(河井さん)



始めて分かった農業の奥深さ

河井さんが農業を始めて実感したのが、「農産物は思ったよりデリケート」だということ。

「たとえばキャベツは雨で泥をかぶると、病気になってしまうんです。でもそれって人間で言えば、布団の上で寝ている人が布団をかぶったら病気になるってことですよね…どういうこと?? なんて思ったりして(笑)農産物ひとつひとつに気をつけなきゃいけないことや苦手なことがあるので、毎年勉強になります」(河井さん)



また、農作業の中で大事にしていることを教えてもらいました。

「今まで触れてきた農産物は祖父や父がいろんなことに気を配って育ててきていたんだなと知りました。父とは今も一緒に仕事をしていますが、身体が痛いとか疲れた、眠いなどの弱音を聞いたことがないんです。黙々と自分のするべき仕事をしている。それが本当にすごいし、かっこいい。そんな父を見習って、僕も弱音を吐かないようにしています!」(河井さん)



農業というと黙々と作業するというイメージを持っていた河井さんですが、「全然孤独じゃなかった。いつも誰かしらとの行き来があるし、研修や会議もあるし、人とのつながりが多くて楽しいですよ」と笑顔で話します。

先日、仲のいい生産者仲間と直売所で立ち話をしていたとき、その方が「俺、60になったら畑辞めるから」と言ったそう。河井さんが「今、40歳だから、あと20回ですね」と言うと「そっか。20回か。それは寂しいな」と答えたといいます。



「作物って年に1回しか作れません。上手くいくかいかないかのチャンスは年1回。僕も80歳まで頑張るとして、できるのはあと44回。40回も繰り返せばプロになれるのかなと思ったりしますね」(河井さん)

目指すべき姿を探求し、毎年挑戦を続けています。

八王子の新しい名産品 パッションフルーツ



現在は、生産者13人で組織する「八王子パッションフルーツ生産組合」で、パッションフルーツのサイダーや綿あめを作ってイベント出店をしたり、地元小学生にパッションフルーツの植え方指導を行っています。

また、マーケティングを研究する大学のゼミ生とコラボして地元の洋菓子店とパッションフルーツを使ったスイーツを販売したりと、活動の幅を広げています。


パッションフルーツは栄養たっぷり。ギフトにもお勧めです。写真は専用のギフトボックス。

「まだまだ食べたことがない人が多いパッションフルーツの可能性はすごくあると思って。一口食べるだけでふわっと広がる常夏感はパッションフルーツならでは。明るい気持ちになれるこのフルーツの魅力を、いろいろな人と協力しながら伝えていきたいです」(河井さん)

なんでも挑戦! バラエティ番組出演経験も

最後に、意外な特技を見せてくれました。その特技というのは、モノマネとダンスポーズ!

さっきまで河井さんとお話ししていたはずが…あれ?そこにいるのは有名予備校講師、林修先生!



リクエストに応えてその場で髪をくしゃくしゃっとして「今でしょ!」ならぬ「パッションフルーツでしょ!」を見せてくれました。

実はこの「今でしょ」は、社会人になってからバラエティ番組の「笑っていいとも!」のオーディションに行ったものの、選ばれることがなかった一発芸、という悲話が…。

でも、遡って高校時代に河井さんは見事、オーディションに合格して出演した経験があるそうです。それがこの、体を反らして地面に限りなく平行に近づける、ダンスの「パンケーキ」というワザ。



映画「マトリックス」で銃弾をよけるシーンとしても有名ですね。拍手!

大学時代にはダンスサークルでストリートダンスを踊り、高校時代と浪人時代にはラッパーとしてライブ活動もしていたという魅力たっぷりな河井さん。これからも芸の幅をますます広げてくださいね!

河井さんの栽培する八王子のパッションフルーツの販売先は「八王子パッションフルーツ生産組合」でチェックしてみてください。


河井農園

河井豊さん

東京都八王子市で200年以上続く農家を継承し、就農して今年で9年目。大学卒業後、小中学校生向けの学習塾の塾講師となり、4年間勤務ののち就農。JA八王子パッションフルーツ生産組合所属。河井農園では米や野菜を年間約30品目育てており、農業はお父さん、お姉さんとともに行いお母さんは自宅での野菜販売や出荷をサポートする家族経営。河井さんは4アールの土地でパッションフルーツを育てている。

写真/津田雅人 取材協力/JA八王子

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