2022.02.08

働く

【農業女子インタビュー】肩書きはハイパーこんにゃくクリエイター⁉生産・加工とマルチに活躍する農家に密着

2005年、夫とともに東京から群馬県沼田市に移住した遠藤春奈さん。夫妻揃って農業未経験でしたが、こんにゃく芋農家としてスタートし、こんにゃく工房を立ち上げました。春奈さんの作るこんにゃくは、経済産業省が選定する「ふるさと名物500選」にも選ばれるなど、いま大注目! アイデアとエネルギー溢れる春奈さんに、詳しく話を聞きました。

【画像を見る】ハイパーこんにゃくクリエイター、春奈さんの原動力とは?


きっかけは子育てについての夫のひと言

2005年までは、都心で働いていた遠藤さん夫妻。移住のきっかけは、子どもを授かった時に、夫の周(しゅう)さんが、つぶやいた言葉でした。



「夫が『自然に囲まれた環境で子育てしたいから、群馬の実家に帰りたい』って。気持ちはわからなくもないけど、仕事はどうするの?と尋ねたら『農家になりたい』と。夫の実家は農家じゃないし、わたし達二人とも農業経験が全くなかったので初めは驚きました」(春奈さん)

周さんの実家は群馬県沼田市。山や湧き水に恵まれた自然豊かな地域です。



忙しい毎日に疲弊する周さんを見てきた春奈さん。「せっかくだし行ってみるか」と、移住を決断しました。

「わたしは海外で暮らしていたこともあり、もともとフットワークが軽いので、移住自体そこまで重大なこととは思っていなかったんです。食べられる野草の図鑑を買ったりして、むしろワクワク。あの頃は楽観的でしたね(笑)」(春奈さん)

こんにゃく芋農家として新規就農!

周さんの故郷、沼田市へ移住を決めた遠藤さん夫妻。知人からこんにゃく芋畑を引き継ぎ、こんにゃく芋農家として就農しました。

「農作業の意味を知らず、言われたことをやるだけだった数年は本当に大変でした。すべてのこんにゃく芋を台無しにしたり、台風の被害を受けたりしたことも。数年は赤字続きだったんですよ」(春奈さん)



慣れない作業や土地の人間関係に苦労をしながらも、勉強を重ねた遠藤さん夫妻。その甲斐あって、就農して17年目の現在は、大規模経営といえるほどの畑を維持するまでになりました。

「こんにゃく芋栽培のメインは夫。わたしは収穫などの作業を手伝いつつ、こんにゃくの魅力をわたしなりにとことん追求するべく、ハイパーこんにゃくクリエイターと名乗り、こんにゃく加工の工房を切り盛りしています」(春奈さん)

独自の視点で次々と商品開発!



畑を見守りつつ、こんにゃく加工を手がける春奈さん。製法に工夫を凝らし、定番のこんにゃくから、規格外果物を使ったサステナブルなこんにゃくスイーツまで、「ハイパーこんにゃくクリエイター」という肩書きで、さまざまな商品を開発・販売しています。

「手作りのこんにゃくって市販のものと食感が全然違うんです。まるでゼリーやプリンのようなプルプルさ。そんな手作りこんにゃくの魅力を見つめなおしたら、アイデアが出てきて…」(春奈さん)

新しく開発した「てんぐの玉手箱」(果物を使ったこんにゃくゼリー)を例に春奈さんは話します。


ミカン、リンゴ、イチゴ、ブルーベリー、4つの味のてんぐの玉手箱。ぷるぷる、ちゅるんとジューシーなこんにゃくゼリーです。

「群馬県は農業が盛んで、果樹園もたくさんあるんです。でも規格外で出荷できず、廃棄されてしまうものも多いと聞いて…。そこで手作りこんにゃくの食感を活かしたこんにゃくゼリーを作りました。規格外果物をたっぷりと使用して、果汁感がしっかり味わえます。風船に入ったゼリーを竹串で割って食べるので、楽しいですよ」(春奈さん)

風船をプチっと割るとプルンと出てくるこんにゃくゼリー。海外でも販売したところ、大好評だったそう!

デザートにもなる⁉手作りこんにゃく

春奈さん考案のアイデアこんにゃくは他にもたくさん。

一つ一つ手作業で丸めて作る『湧水と蒟蒻のちゅるりん玉』は高級レストランのデザートとして提供されるなど好評です。



「こんにゃくってクセがなく、しょっぱくしても甘くしても、どんな味付けにも合うので、デザートにも使えるこんにゃくを作りました。プルンプルンとした食感がこれでもか! というくらい感じられて食感も楽しめます。はちみつやきな粉、ヨーグルトにも合いますし、もちろん、しょっぱい味付けにも合うんですよ」(春奈さん)



その他にも、表面をザラザラにして、味がよりなじむように作った「湧水と蒟蒻のこんにゃくめんめん(こんにゃく麺)」や、地元の蔵元とコラボした日本酒こんにゃくゼリー、タピオカの代わりに果物由来のカラフルこんにゃくを入れたこんにゃくバブルソーダなど、オリジナリティあふれるたくさんのこんにゃくが!

さすが、ハイパーこんにゃくクリエイター。消費者目線で地域密着、サステナブルな商品を数々生み出しています。

皆が幸せになれるこんにゃく作りを目指して

規格外の果物を使用したり、こんにゃく芋の廃棄部分を少なくした独自のこんにゃく製法を開発するなど、サステナブルな取り組みを行う春奈さん。



「果物を廃棄せずにすむと果樹園の方は喜んでくださるし、おいしい果物がふんだんに使えて、私たちもありがたい。私たちがこんにゃく芋を栽培し、こんにゃくに加工できているのも、豊かな自然があって、協力してくれる人がいるから。関わってくれる皆が幸せになることを目指して、こんにゃくを作っています」(春奈さん)

こんにゃくの可能性をぐんと広げた春奈さん、これからの活動にも注目です!


こんにゃく工房 迦しょう

遠藤春奈さん

神奈川県の高校を卒業後、海外へ留学し、日本語教師などの仕事を経て結婚。2005年、群馬県沼田市に移住・新規就農し、こんにゃく芋の栽培農家に。大規模経営となった畑は主に夫が作業し、本人は、伯父から引き継いだ「こんにゃく工房 迦しょう」で、商品開発から販売までを手がけている。

こんにゃく工房 迦しょうHP
https://konjac-kasho.com/
こんにゃく工房 迦しょうInstagram 
https://www.instagram.com/konjac.kashosan/
こんにゃく工房 迦しょうFaceBook
https://www.facebook.com/konjac.kasho

写真/Max Houtzager 沼田市写真/PhotoAC 取材協力/JA利根沼田

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