2021.12.12

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【サステな昭和暮らし】昭和20年代レシピ!「古たくあんで変わり福神漬け」作ってみた!【料理温故知新】

突然ですが、当メディア「あたらしい日日」の背景には、月刊『家の光』という家庭雑誌の存在があります。その歴史は古く、大正14年の創刊。古い雑誌を眺めていると、面白い記事に出くわすことが多々あります。そこで、料理だったり家事だったり、古い記事のなかから興味深いものをピックアップ!そのアイデアを再現してみようと思います。当時の制作者の思いは違うはずですが、あらためて今見返すと“サスティナブルな思想”に通じるものがたくさんありました…。


この記事の画像一覧をチェック!

記事の内容は…



家庭雑誌・月刊『家の光』の、多分昭和20年代に刊行された号に掲載の「古たくあんで変わり福神漬け」レシピ(?)です。きっと投稿記事でしょうね。これを「再現して記事を書いてください」という依頼でしたので、さっそくチャレンジしてみます!

切ったり干したり漬け汁に火を通したり…、結構手を加えた上に、さらに1週間も待つ。手間暇がかかっているようですね。「お母さんがたくあんを陰干しし始めたから、来週はカレーが食べられるかも」。そんなことが、当時の子供たちの間でまことしやかにささやかれていたら面白いな、なんていう妄想を掻き立てられました。
カレー大好きなわたしにとっては、なんとも心躍るレシピ。ふんどしを締めてかからねば。

福神漬けといえばカレーですね。ちょっと調べてみると、1871年(明治4年)に日本でも肉食が解禁されると洋食店が増え、その頃にはカレーは人気食になっていたようです。現在のエスビー食品がカレー粉の製造に成功したのが1923年(大正12年)だそうで、その頃から一般家庭でもカレーが食べられるようになったそう。1948年(昭和23年)には、学校給食に導入されたとも。

で、この古い記事との関係性を妄想するに…、カレーが家庭でも、もしかした学校でも食べられるようになった頃のものなんでしょうね。おいしいカレーにはおいしい福神漬け!という当時の主婦の気持ちが乗った投稿なのだと思いました。絶対そうです!

いざ、福神漬け作りへ!

レシピにある材料を集めました。



シソの実のみそ漬けは聞くのも見るのも買うのも初めてだったので、そのまま少し食べてみました。なんとも独特のお味。福神漬け以外にもアレンジレシピを考えてみたいものです。
まずは「たくあんを洗い、小さく切って陰干し」です。

そして、すべての材料を細かくして合わせたのがこちら。



コンブ、シソの実のみそ漬け、ショウガはわかりやすく上に乗っていますが、この下にするめとたくあんが入っています。

ここに、砂糖を入れて煮溶かしたしょうゆを入れます。



ひたひたってこんな感じでしょうか?「ひとつまみ」くらいの表現ならなんとなくわかるのですが、「ひたひた」がどれくらいなのかは難しいところです。

ちなみに、砂糖の量は指定がなかったので私の感覚で入れました。
しょうゆ大さじ3に対して、砂糖大さじ1。糖質を抑えたいという欲求がこんなところにも出てしまいました。
しかし、「砂糖は思っているより入れた方が良い」というのが今回の教訓です。教訓その1。
ひと通り作ってみての感想なんですが、結構入れているつもりでも「もう少し入れた方が良かった」と思ったんですね。

さて福神漬け作りもいよいよ佳境。
「押しぶたをして1週間」です。しかしここで問題が発生!
わが家、押しぶたがない。
何かで圧力をかけながら漬け込むことがレシピから求められているミッション。
苦肉の策でこうしました。



福神漬けのお皿にラップをかけた上から、捨てる予定だったペットボトルを洗って容器にはめてみたら、まさかのシンデレラフィット!
ペットボトルの底から「お前の人生、それでいいのか?」と聞こえてくるような気がしましたが、ギュッと押し込んで乗り越えました。

たまたま使った容器の直径がおよそ6cm。そこに500mlのペットボトルの底がピタリとハマる。
これはもしや七福神のお導き!?

そしてカレーの固形ルウを買い、ニンジン、ジャガイモ、たまねぎ、鶏肉と、着々とカレーの材料を揃えてひたすら待つこと1週間。
一刻も早くカレーを食べたい衝動を抑え、福神漬けが漬かりきるのを待ちました。

実食!のその前に

古たくあんの福神漬けを漬け込みながらわたしが考えたのは「家にある余りがちな漬物、全部使えないかしら」ということでした。

そのそも福神漬けとは、七種の下漬けした野菜を塩抜きし、しょうゆや砂糖と合わせて漬け込んだもの。その発祥には諸説あるものの、野菜の切れ端などを干して漬物にしたという生い立ちらしいのです。やっぱり、昭和の暮らしはサステなです。

だったら、家庭で持て余してしまった漬物なんて、福神漬けにはおあつらえ向きでしょう。
いっそわが家の漬物を使って同じように作り、福神漬け食べ比べといこうじゃありませんか。



変わり福神漬け食べ比べ、エントリーはこれらの漬物です。
どれも買ってしまったものの、意外と消費ペースが遅く持て余しがちな漬物ではないでしょうか。
これらの漬物それぞれで、するめや切りコンブ、シソの実のみそ漬け、ショウガを加え福神漬けにしてみました。

(分割:いざ実食。食べ比べしていきますよ~)

いざ!変わり福神漬け食べ比べ!

待ち望むものがある時、1週間はかくも長く感じるのですね。
指折り数えて漬かるのを待つというのも、なかなかオツな時間でした。
そうしてようやくご対面できた「変わり福神漬け」がこちら!



ラップを外した途端に広がる香ばしいしょうゆの香り。
そっと底の方をすくい上げると、しょうゆの色に染まったたくあんが顔を出します。
見事な漬かりっぷり。首を長くして待った甲斐がありました。達成感!



こんなにいろんな福神漬けが揃うこともないので、いわゆる市販の福神漬け(画像は本物を明記)にも加わってもらい、いざ食べ比べです。
しかしお気づきでしょうか。当初の予定ではここに6種の福神漬けが並ぶ予定でしたが、4種しかないのです。
残念ながら2種類ほど、漬けている間に腐ってしまいました。
理由はおそらく「陰干しが足りず、漬物の野菜の水分で腐ってしまった」ということではないかと思います。
「変わり福神漬けを漬ける時は、材料の漬物をしっかり干して乾かしておかねばならない」というのが今回の教訓その2です。

非常に残念ではありますが、この4種を食べ比べしていきます!



エントリー1 たくあん



今回のメインです。
慎ましい黄色のたくあんはしょうゆ色で染められてしまいましたが、食べてみるとその存在感は健在。
パリパリとした食感といい、しょうゆやするめから出た旨味との相性といいおいしい一品。
カレーとの相性もよく、違和感がありません。

エントリー2 きゅうり漬け



漬物の中でも代表的なきゅうりの漬物。パリパリ系の食感もたくあんに近いものがあるのでこれも違和感なさそう、と思っていたのですが…。
見た目にも食べてみてもきゅうりの存在感はまるで無し。
味の面でもシソの実のみそ漬けが幅をきかせており、なんとなくたくあんで作った方がおいしかった気がします。

エントリー3 にんにく醤油漬け



さすがあらゆるものをおいしくするニンニク。風味も味わいも主張が強く、カレーとの相性も抜群です。
しかし一方で、食感という点においては多少柔らかいので物足りません。
カレーを食べる上で「食感に変化をつける」という役割が福神漬けにはあるような気がするので、漬物単体としては美味しいですが、カレーに添える福神漬けとしては今一つでした。

エントリー4 市販の福神漬け



一般的な福神漬けの味も比べてみようと思い用意しましたが、まず気になったのが、「圧倒的な色の鮮やかさ」。わたしがイメージする福神漬けそのものです。一方最近では着色料を使用せず、茶色いままの福神漬けも人気だそうです。ちょっと考えさせられました。

やはりこのパリパリとした食感。辛いカレーを食べているからこそ際立つほのかな甘み。

カレーの箸休めにはうってつけの漬物です。
そしてこの福神漬けを食べた時、わたしは今回の教訓その1「砂糖は思っているより入れた方がいい」を思ったのです。
福神漬けは、甘い方がおいしい。

しば漬けとつぼ漬けは残念ながら腐ってしまったのでエントリーできませんでした。が、わたし個人的には、酸味のあるしば漬けやたくあんと同じく大根からできているつぼ漬けは、福神漬けにはピッタリな材料のような気がしています。
しっかりと陰干しして、いつかリベンジしてみたいです。

昭和のレシピには学びがいっぱい!

古いたくあんで福神漬けが作れちゃうんだ、と軽いノリで挑戦してみた「変わり福神漬け」作りでしたが、このレシピに挑戦しないとわからない料理の学びもありました。
何より、昭和の主婦たちの「食べ物を無駄にしない」姿勢はわたしたちが受け継いでいくべきだと思います。

福神漬けは甘い方がおいしいと書きましたが、その一方で「しょうゆで辛めに作った福神漬けはご飯のおかずとしてもおいしい」とも思いました。
福神漬けといえばカレーですが、むしろこの「変わり福神漬け」はカレーじゃなくてもおいしいかも。

ご家庭の持て余している漬物、しっかり陰干しして砂糖じょうゆで漬け込んでみると、ちょうどいい味変になっていいかもしれません。

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