2022.07.07

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【食べるSDGs】「昆虫食」が未来を救う⁉昆虫のスペシャリストに教わる食糧としての可能性とは…⁉

6月4日に東京国際フォーラムで開催された「SDGs×美食育~選食力でつくる未来の環境と美しさプロジェクト~」に行ってきました。無料で参加できるセミナー「昆虫食のプロが考える!昆虫食×SDGs」に参加してきましたよ~。無印でコオロギのせんべいが売られたり、街中の自販機で昆虫が入ったスナック菓子を目にするなど、ジワジワと身近になってきた「昆虫食」。実際、何がどういいんでしょう? 取材してきました。

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昆虫料理研究家×昆Tuber!昆虫スペシャリストによるトークセッション 

昆虫研究家の内山昭一さんは、NPO法人昆虫食普及ネットワーク理事長を務めている方。長野県長野市の生まれで、「比較的、昆虫を食べる文化があるところ」で生まれ育ちました。「僕は5歳のときに初めて昆虫を食べたんですよ。そのときはカイコのさなぎでした」。以来、“昆虫は食べ物である”という認識を持ち続け、現在は昆虫料理研究家としても活躍されています。

昆Tuber清水和輝さんは現在、近畿大学大学院の1年生で、後輩たちと昆虫食の普及活動を行う団体を立ち上げて活動しています。同時に、主に子どもたちを対象に昆虫食とSDGsを伝える講座やワークショップなどで講師を務めています。また、『昆Tuber』としてYouTubeで活躍されています。さらに、株式会社NEXT NEWWORLDでシルク由来のタンパク質を活用した食品の担当の取締役という顔も持つ昆虫食のスペシャリストです。

日本で親しまれてきた究極の伝統食「昆虫」 



今でこそ昆虫食と聞くと、ややゲテモノ感を覚えてしまいますが、人類が進化していく過程において昆虫は日常食だったそうです。日本も多分に漏れず、1919年に行われた全国的な調査結果によると、当時は55種類の昆虫が日常で食べられていたという記録があるといいます。

時はずっと飛んで令和の現代…現在昆虫食として市販されているのは、イナゴ、蜂の子、カイコ、ザザムシなどでしょうか。日本の中で特に昆虫を食べているのは、長野県の伊那地域だそうです。

いま昆虫食のファンは急増中だそうで、きっかけは2013年にFAO(国際連合食糧農業機関)が食糧問題の解決策のひとつとして昆虫食を推奨する報告書を公表したことでした。SDGsがクローズアップされるようになり、以前より広く浸透しつつあります。

栄養価の高さが注目を集めていて、高タンパク、低脂肪、ミネラルも豊富で、殻には食物繊維的な働きもあるとか。理想的な栄養食であり、そのおいしさも昆虫食の魅力だと話していました。

ちなみに内山さんは「これからの季節が楽しみ♪」とコメント。というのも、セミ推しなのだとか。成虫はサクサクとした食感、幼虫は中に肉が詰まっていて「それぞれおいしい♡」。そして、「セミの燻製はファンがかなり多いんですよ。昆虫食好きの集まりなどで腕をふるうことがあるんですが、コレを出すとあっという間になくなります!」とも話していましたよ。

昆虫料理研究家・内山さんの作る「昆虫料理」とは?

という流れで、内山さんの昆虫料理にも少し触れておきます。

内山さんが作るのは、昆虫食の代表格ともいえる佃煮レベルではもちろんありません。より工夫の凝らされたパンチのあるものばかりです。まずは先ほど出ました「セミ」。幼虫と成虫の味わいの違いを楽しむためにそれぞれ串に刺して揚げるとか。いろんな昆虫をガレットみたいに仕立てたり、カイコの幼虫・成虫・卵・ふんとすべてを使った「カイコづくし丼」なんてものも。よく作るものに「昆虫寿司」もあるそう…。

ちょっとベテランの域過ぎてコメントのしようがないんですが(笑)、とにかく目新しい料理ばかりです。

地球を救う食糧…至高の未来食「昆虫」 

地球の人口は現在77億人です。これが2050年には97億人になる想定だそう。人口増加が進む中で、持続可能な開発目標…SDGsの17項目が掲げられ、各国でさまざまな施策が行われていますよね。その一環に「昆虫食」があるのです。というのも、人口が100億人に近づく2050年には、食べ物がすべての人に十分に行き渡らない可能性があるといいます。

日本でも食糧問題はあります。フードロスは大量の食材が廃棄されている問題ですが、その一方で子どもの貧困問題もあるのです。子ども食堂ってご存知ですよね。令和の世の中で「お腹いっぱいご飯が食べられない」、そんな子どもたちがいます。これは人口増加から食べ物が足りない…そんな簡単な話ではなく、富の再配分、格差社会の深刻さからくる食糧問題なんですね。

問題は他にも…地球の温暖化です。これの何が問題なのか。ざっくりと言うと…。

現状大量のCO²(二酸化炭素)が排出されています。これが、平均気温が上がる要因と言われています。気温が上がると北極の氷が溶けて白クマの住処がなくなる…なんて話、聞きますよね。このまま海面の水位が上がり続けると「島」が沈むなんてことにもなりかねないそうです。海が温まることで降水量が増えたり、反対にまったく降らずに砂漠化が進んだり…。これが気候変動です。

清水さんは「地球には限界があるんです!もう耐えられないときがきます!」と言います。住むことができなくなると。この人口増加からの食料問題や気候変動対策に昆虫食が有効だと、清水さんと内山さんは考えているのです。昆虫食とSDGsについては、後でもっと詳しく書きますね。


食糧難の救世主である昆虫食



ここで昆虫食がどれほど優れているのか、さまざまな視点から、牛とコオロギとの比較で見てみましょう。

牛とコオロギの環境負荷の比較

体重1㎏あたりの環境負荷から見てみましょう。牛の場合は、必要な餌は10㎏で温室効果ガスが2850g排出されます。温室効果ガスは、温暖化の主な原因と言われています。

一方でコオロギの場合は、必要な餌は1.7㎏で温室効果ガスは2gとなります。

想像していましたがホントにスゴい差がありますよね。

牛とコオロギのタンパク質量の比較

100gあたりの成分比較をすると、牛肉100gにはタンパク質が19.4g、ところがコオロギには100gあたり69g(乾燥重量ベース)も含まれています。コオロギさん、タンパク質の塊なんですね!

ちなみにコオロギには、マグネシウム、リン、セレン、亜鉛など、健康に良い影響を与えるさまざまなミネラルも含まれているそうです。

牛とコオロギの生育期間の比較

牛の場合はさまざまですが、一例で言うと生後30か月で出荷します。一方でコオロギは1~2か月で成虫になり食べられる状態になります。しかも小さな衣装ケースくらいの生育ボックスで1000~1500匹が育てられるとか。短期間で大量に育てられるのも魅力というわけですね♪

こんなにもSDGsに貢献できる「昆虫食」



さて、そろそろ昆虫食とSDGsについて講演の内容をまとめてみます。持続可能な開発目標の17項目のうち、実に5つの項目に貢献できるんですよ!

NO.1 「貧困をなくそう」
昆虫は比較的簡単に飼育ができます。初期投資も少なくて済みます。「コオロギの養殖はほとんどお金がなくても始められますよ」と清水さん。新しい仕事として成立する→雇用が生まれて貧困問題に貢献します。

NO.2 「飢餓をゼロに」
低コストで大量に飼育できて、高タンパクで栄養豊富…栄養改善に役立つのが昆虫食です。

NO.9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
養殖や食品開発が行われていく中で、さまざまな技術が生まれます。研究開発がさかんになり、技術革新の拡大が図れるのです。

NO.12「つくる責任 つかう責任」
コオロギは雑食性なので何でも食べます。廃棄処分になる食品を餌にすることで、フードロスの削減に貢献できます。また、例えばカイコのケースで言うと、佃煮として食品に加工しますが、繭は洋服などアパレルや化粧品の原材料に使うことができます。さまざまな分野で活用可能でアップサイクルな素材なんです。「つくる」「つかう」のパターンが確保できるというわけですね♪

NO.13「気候変動に具体的な対策を」
昆虫の飼育は環境への負荷が非常に小さいです。CO²の排出量の少なさを始め、地球環境にとてもやさしいんです。

みなさん、どうでしたか? 昆虫食がSDGsに貢献できて、未来に向かって可能性が大きく開かれていることがおわかりいただけたかと思います。でも一方でこんな警鐘も鳴らしています。


すべての昆虫食がSDGsではない! 

最近、昆虫食の自販機があるのをご存じですか?

今回お話したコオロギやカイコ、蜂の子などが売られているんです。でも、そこにある昆虫食がすべてSDGsだと思ったら大間違いだそう。清水さんは自販機の画像を見せながら「サソリやタランチュラの昆虫食がSDGsに貢献か? 答えはNOです」…実際にこれらを食べても「地球環境には何も起こりません」と話します。興味本位な食べ物ということですかね。SDGsについては、情報を正しく見極める必要があると言います。

例えば、「ソーラーパネルを大量に設置して太陽光を利用しよう!」。これだけ聞くと「めちゃめちゃSDGsに貢献してる!」なんて思いがちですが、山を切り開いてさら地にして…そんなことまでしてソーラーパネルを設置するのがSDGsなの⁉ それで電気を生み出せますってことが本当に正しいの⁉ SDGsの「取り組みと事業の矛盾」を見極めることが大切だと話していました。


昆虫食のある未来を見つめて

このセミナーに参加して昆虫食について初めて深く考えました。昆虫食というとバラエティ番組などで罰ゲームに扱われるもの、とあまり良い印象はありませんでした。でもそんなイメージが払拭できたと思います。世界の食糧危機を救う、救世主な存在として大きな未来を感じました。清水さんが言っていた「昆虫食は正しく楽しく美味しく」という言葉。これからは「昆虫食」を正しく知って、楽しくおいしくいただこうと思います♪


参考文献:肉用牛の育て方 | 茨城県畜産農業協同組合連合会


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