2022.01.14

食べる

【戦前レシピ】大根ではなく「ナスの切り干し」に挑戦!でもムズい…失敗したかも⁉【サステな昭和暮らし】

突然ですが、当メディア「あたらしい日日」の背景には、月刊『家の光』という家庭雑誌の存在があります。その歴史は古く、大正14年の創刊。古い雑誌を眺めていると、面白い記事に出くわすことが多々あります。そこで、料理だったり家事だったり、古い記事のなかから興味深いものをピックアップ! そのアイデアを再現してみようと思います。当時の制作者の思いは違うはずですが、あらためて今見返すと“サスティナブルな思想”に通じるものがたくさんありました…。

【画像を見る】戦前の”なすの干し方”にチャレンジ!さて、できあがりは…?

記事の内容は…



今回の古い記事は、昭和5年~32年頃のものみたいです。「ナスの保存」ですね。

『家の光』の読者は農家の方が多いので、たくさん収穫したナスを無駄にすることなく、しっかり保存をして長い期間楽しみたい、ということなのでしょう。令和のいまなら、さしづめSDGsの12番「つくる責任、つかう責任」に重なりますね。普段からわたしも、せっせと食材の使い切りには精を出しております。

さて、本題です。記事を読んで気になったのは、「ナスの切干」。大根じゃないんですね。わたしはナスの切干、知らないです。見たことがないです。ちょっと興味が沸いてきましたよ。

まずはサラッと書いてあるけど読めない字を回収しましょう。

「蔬菜」
そさい。野菜のことだそうです。

「筵」
むしろ。干すときに下に敷く、ワラとかイグサで編んだ敷物だそうです。「針のむしろ」のむしろはこれです。

野菜のことを蔬菜って言うんですね。
多分令和ではほとんど使いませんよね、日常会話で。「野菜」で済みますから。したり顔で「蔬菜」を使いまわすのは、愚かなのでやめておきます(笑)。

今回のメイン蔬菜(笑)であるナスはスーパーで簡単に手に入りますが、筵はわが家にはありません。
そして仮に買えたとしても、集合住宅であるわが家のベランダには広げる場所がありません。
さらに、わたしが気になるのは「虫とか来ないのかな」ということ。
生野菜、しかもナスって虫が好きそうじゃないですか? 衛生面が気になります。
今回のミッションはなかなか手強いぞ。

現代のムシロを探せ!

時は令和。我々には強い味方がいます。
そう、100均。わが家の近くのダイソーへGo~!

昭和の、もしかしたら戦前の頃かもしれない記事の再現ですが、現代の便利なツールを積極的に使ってこその温故知新ですよね。そこは、ラクしちゃいましょ♪

ちなみにダイソーの創業は昭和52年だそうです。100均ショップって、もっと最近の会社なのかと思ってました。あ、余談でしたね。

筵に代わるもので、虫への配慮もできそうな気の利いた便利グッズを探しにいざダイソーへ。



ありました。「多用途ネット」!
そのものずばり、ドンピシャです。
集合住宅の小さいベランダにも十分干せるサイズ感。直径38㎝。

一応ネットで野菜を封じますので、大きい虫は防げるのではないかという安心感。
痒いところに手が届いています。さすがダイソーさん!

ダイソーに行ったのは、本当は昭和も平成も令和も主婦をしているわたしの母に相談したら「ダイソーに行けば?」と言われたから、というのはここだけの話です(笑)。
品揃えへの信頼感が半端ではありません。



あとは天候を見定めるのみ。
記事では「もし雨天になつたら、そのまま食べるか、塩漬けに振りかえ」とありますので、途中で天候が変わっても大丈夫そうではあります。

でもせっかくならきちんと干し切りたい。
しかしわたしには天候を見定める能力もないし、もちろん祈るだけで晴れにできるなんていう天気の子でもありませんので、文明の力を拝借しました。



そう、スマホ!

天候予測もスマホで簡単にチェックできちゃう! 良い時代になったもんです。
今日から6日間、晴れマークが並んでいます。
このタイミングを逃すわけにはいきません。というわけで、レッツ切り干し☆

あとは切って干すだけ!と思いきや

今回のメインゲストならぬメイン蔬菜、ナスちゃんズです!



ナスはフォルムが可愛い。

まずはナスを切ります。
縦に四つ割は分かります。多分こう。



次に進む前に素朴な疑問。
二分厚さってどのくらいだろう。
十等分した場合の二つ分くらいの厚みってことかしら?

現代のツールを使ってこその温故知新(3回目)なので、ネットを駆使して「二分厚さ」を調べましたが出てこず。
思わぬところでつまずきましたが、ここまできたらもうあとは度胸です。
「これがわたしにとっての二分厚さ」と言わんばかりに切りました。



適当切り、といっても差し支えないですね。
そしてここで、同じ切り方だけではバリエーションがないなということで、他の切り方でも試してみることに。





縦に薄切りにしたナスと、輪切りにしたナス。
どちらも料理としては使い勝手が良さそうです。

ダイソー の利器「野菜干しネット」にセッティングして、ベランダへ



このネット、本当に優れていて、ナス三本分が重なることなくきれいに並べることができました。
よく考えてみると、地面に筵を置いて干すより、このネットの方が全方位空気に当たって干せるので、かなり効率が良いのでは? と思います。

待ち時間というのは苦手ですが、こと料理や食べ物に関してワクワクしながら待つのは嫌いではありません。
気が短いわたしですが、今回は「乾いたナスってどんなもの?」という興味が勝り、きちんと「待て」ができました。



二日目の写真です。
ちょっと様子が変わっていることがお分かりでしょうか。
外側の皮のところから水分が抜けているのか、皮の表面がパサパサに、少し丸まったりして形状が変わってきています。

しかし、この段階ではまだ柔らかい。水分を含んでいる柔らかさです。



記事には二三日とありましたが、四日間干しました。
四日目の夕方ともなるともう全然別物に見えるほどです。
しっかり乾いているのが見て取れます。



ナスの切干、完成です!
触ってみると、カサついた固い手触りです。
水分が抜けているため、一個一個が軽くなっているように感じました。
手触りでもスカッとしている感じがあります。

いよいよナスの切干を調理!

記事には「煮て食べ」とありますので、やはりオーソドックスな食べ方は煮て食べるというものでしょう。
記事の指示通りに切ったナスを使って、煮付けというか、お浸し風にしてみました。



耐熱の器に入れて、水を加え7分放置、ラップをかけて600Wレンジで5分チン。



めちゃくちゃ色が出てる。
ナスってこんなに色出ましたっけ?

そしてナスの臭いもかなりします。甘いような苦いような臭いでわたしはあまり好きではありませんでした。
干すと臭いが凝縮されて、濃く感じるのでしょうか。
これ、食べて大丈夫なのかしら、という気持ちが込み上げてきます。

野菜の煮汁には栄養素がたくさん染み出していることは分かっているのですが、この臭いと色は食欲に著しく影響しました。参りました。泣く泣く捨てました。

※ちなみに、後日調べてみると、ナスの色素は「ナスニン」という栄養素(ポリフェノールの一種)で、目の疲労や視力回復、がん・動脈効果の予防が期待できるらしいです。
捨てるのはもったいなかった!

そんならと、大根おろしを加え、つゆの素(3倍希釈)と水を加え、釜揚げしらすを加えたのがこちら。



完成です。ナスのみぞれかけお浸し。いざ実食!

なかなかどうしておいしいではありませんか!
乾いたナスが出汁をしっかり吸い、噛むとジュワッと口に広がって美味です!
あの臭いも特に気になりません。強いて言うならナスの風味が濃いです。
より強く、ナスを感じられます。

ただ味はおいしいのですが、どうしても気になってしまうのが食感。
食物繊維食べてる~! って感じがします。筋張っているというか、固いというか。
ちなみにナスの食物繊維は100gあたりおよそ2.2g。これはもやしの1.7倍、きゅうりの2倍だそうです。

ナスが本来持つあのなめらかな食感が損なわれたのは残念ですが、味、食べ応えは十分です。
これに加えて「保存も効く」という要素が加わるなら、ナスの切干、アリでしょう。

ここから始まる悲しい結末(失敗は成功のもとのはず)

お浸しにしておいしかったことに気を良くしたわたしは、意気揚々と縦に薄切りにした切干ナスの調理に取り掛かりました。

失敗その1:焼いてみた

ナスの薄切りタイプの切り干しを焼いてみました。
わたしが普段よく作る、「ナスのケチャップチーズ」と呼んでいる料理です。
レシピは簡単。薄切りナスと鶏肉を炒め、火が通ったらケチャップを加え、上からピザ用のチーズと乾燥バジルをトッピングするというもの。
薄切りナスをしばらく水につけ、水分を含んだことを確認してから同じように調理してみました。



思っていたのと全然違います。
臭いはケチャップとバジルで消えています。
が、何と言っても硬い。お浸しでさえ感じた食物繊維感が、焼くことでさらに増しています。
火にかける前に水を含ませたとはいえ、焼いたら蒸発してしまったのではないかと反省。

やはり切干は「煮る」というのが定石のようです。

先人は記事でちゃんと「煮て食べ」と教えてくれていたのに。悔やまれます。
ただ、「トマト煮」の可能性はあるように思います。ナスの味が濃いので、ナスがお好きなら気に入るかも。
またナスの栄養素の多くは水溶性です。煮汁まで食べられるトマト煮は、ムダなく栄養を摂れるかもしれません。

失敗その2:カビがきた

輪切りナスの切干は3、4日でカビが来てしまいました。
しっかり乾いていたと思ったのですが、水分が残っていたのか、湿気を吸ったのか。
元の記事に書いてあったナスの切り方は、おそらく先人が見つけ出した「きちんと乾かせるサイズ」の切り方だったのだと思います。
輪切りだと厚みも面積も大きいので、もう1~2日くらい干すべきだったのかも。

ちなみに、ダイソーでこんなものを見つけました。



おみそれしました。これこそナスの切干に必要なツール。
乾燥させたからといって油断せず、保存する時もこういう乾燥剤を利用するのが良さそうです。


昭和の主婦の知恵と蓄積に尊敬の念しかない

ナスの切干を作って、新しい食べ方をご提案しようと息巻いていた今回の「料理温故知新」だったのですが、残念ながら届きませんでした。
今わたしが先人たちに誇れることと言えば、「野菜干しネットを見つけたこと」と「スマホで天気予報が見られること」くらいでしょうか。

・切干の乾燥は「切り方」から始まっている
・切干は煮て食べる
・保存にも手を抜いてはいけない

今回もよく学びました。
臭いは確かに苦手ではありましたが、ナスは私の中で一、二を争う好きな野菜。
また切干に挑戦し、今度はもう一つのオーソドックス、(輪切りで作るつもりだった)みそ汁を味わってみたいと思いました。
チャレンジする方は、干し加減にご注意くださいませ!

※記事中で登場した商品は、掲載当時の情報であるため、在庫状況、価格などが異なる場合があります。

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