2022.05.13

食べる

【美食家・魯山人考案】普通の卵と醤油だけで「究極の卵かけご飯」を作る方法!試してみたら驚いた!

TKG(卵かけご飯)――。それはお手軽な食事なのにわたしたちを魅了してやまない卵料理。この国民食に希代の美食家・北大路魯山人がこだわっていたことをご存じでしょうか。先日教養バラエティ番組『すイエんサー』でその究極の裏ワザを紹介していました。あの魯山人が考案したんです、おいしいのは間違いないはず…! というわけで、究極の卵かけご飯を作ってみました。


【画像を見る】おいしいのは間違いない!魯山人の「究極の卵かけご飯」を作ってみたら…


魯山人考案のおいしい卵かけご飯、その作り方とは?

『すイエんサー』で紹介していたのは、こちらのやり方!

①炊き立てのご飯の上に「手で温めた」卵を割る。
②しょうゆをかける。

これだけ!!
あまりにも単純、かつ簡潔なワンツーフィニッシュ!
これで魯山人に「この世で最もうまい」と言わしめた卵かけご飯が食せるなんて、にわかには信じがたいです。
一刻も早く食べてみたい! この世で最もうまい飯!
レッツ⭐︎クッキン!と、その前に…。

卵かけご飯のことを調べてみると、かなり奥深かったので紹介します。

その1:16種もあるTKG style

卵かけご飯について調べているうちに見つけたのが、日本たまごかけごはん研究所。

この研究所が提示しているTKG styleの表によると、作り方は16種もありました。

最後の方の「SKG」や「TK」、「Imagination」は遊び心かなと思いますが(そして「I miss you」と「Macho men」の違いもよくわからず…)、こんなにTKGの作り方があるとは!

おいしい卵かけご飯の作り方と言われて真っ先に「トッピングでも工夫するのかな」「にんにくを入れればなんでもおいしい」などと思った自分が恥ずかしいくらい、「卵としょうゆと米だけ」の作り方。
知らない世界がありすぎて怖いくらいです。

その2:しょうゆへのこだわり

この、日本たまごかけごはん研究所が300種以上のしょうゆを試して一番おいしかったしょうゆの醸造元と共同開発した、という公式しょうゆを販売していたので、もしやと思い「TKG しょうゆ」で検索。
すると、いろんなしょうゆがいろんな醸造元から出されていました。

その多くが出汁にこだわっていて、卵との相性について研究に研究を重ねられたものばかり。
商品名に「卵」や「卵かけ」などと付けているところに、作り手の覚悟が窺えます。
中にはトリュフなどの高級食材が入っているものも。
卵をかけて混ぜるだけのシンプルな料理にいかに付加価値をつけるか、という勝負の仕方もあるのだなと感心してしまいました。
いつか食べてみたい。

作り方や材料へのこだわり、おいしさへの飽くなき探究心をTKGに見つけたわけですが、それを嘲笑うが如く魯山人考案の究極の卵かけご飯の作り方は単純です。
前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ作って、実食です!

卵を温めるという苦行

本日の主役、卵です。



この時、冷蔵庫から出したばかりなので、卵の表面温度は15.3℃でした。



で、ここからが核心です。卵を「手で温める」わけですが。
なんと30分も手の中で温め続けないといけないのです。



タイマーで測りながら両手で卵を包み込む。
※写真を撮るために右手が写っていませんが、温める時はちゃんと包み込んでいます。

冷えた卵なので、手の方も冷えてきます。
適宜温かいお茶を飲んで体を温めたり(その間も卵は優しく握り締めたまま)、揉むように手の中で卵を転がし摩擦熱を加えたりしました。

お腹が空いているのに加え、おいしい卵かけご飯を早く食べたいという気持ちがどんどん高まり、永遠にも感じる30分間。

我慢が限界点を突破しそうになった時、やっとタイマーが温め時間の終了を告げました。
喜びに打ち震えながら、卵の表面温度を測ると…。



30.4℃!
めちゃくちゃ温度上がってる!+15.1℃!
かなり温まっています。

さぁ! さぁ! 早く卵かけご飯が食べたい! もうお腹ペコペコ!
と、慌ててご飯に割り入れたせいで…。



ご飯の真ん中に黄身が鎮座する最高のTKGを写真に収めたかったのに!
わたしの焦りをこんな形でお伝えすることになるとは、夢にも思いませんでした。

いざ、実食!
日本たまごかけごはん研究所のTKG styleでいうところの「Shooting Star」という作り方でいただきました。
卵としょうゆをかけて混ぜるだけ!

一口食べて、思わず「うまい!」と叫んでしまいました。

濃厚な卵の甘みとコク、しょうゆの風味豊かなしょっぱさ、それらを味わいと食べ応えの両面でしっかり下支えする白米の存在感。
これぞ、この30分間まぶたの裏に思い描き、恋い焦がれたTKG! やっと会えたね!

脳天を突き抜ける幸せと、胸の奥から溢れ出る卵やしょうゆやお米への感謝、そして自然と紡がれる魯山人への謝辞とリスペクト。
時間にして5分程度のエクスタシーだったのですが(ものすごい勢いで食べてしまった)、正直なところ卵かけご飯の感想を記事に書くことすら頭から抜け落ちるくらい夢中で食した5分でした。

恐るべし、魯山人。
確かに「この世で最もうまい」かもしれない。

なぜ「手で温める」だけでこんなにもおいしいのかというと、人間の舌には「味蕾」という味を感じるセンサーがあり、温度が高い方が味を感じやすい性質があるからだそうです。
冷蔵庫から出したばかりの卵だと、ご飯も冷やしてしまうし、そもそも卵も冷たくて味を感じにくいということなんでしょうね。

だからこそ、温めた卵で作った卵かけご飯は、一口目から卵の味をガツンと感じられたのかもしれません。
卵が変化したのではなく、わたしたちの体の仕組みからよりおいしく感じられたというのは、作り方やトッピングよりも深いところにある、TKGをおいしく食べる工夫ですね。

「人間の舌の仕組み」だけで、あのおいしさが説明できるのか?という疑い

ただ、わたしとしては他のことが何も考えられなくなる程のおいしさの理由が、単に15℃の温度差だけとは思えません。
つまり、「あの30分」にこそおいしさの秘密があるのではと考えました。

何と言っても30分間、「早く食べたい」「早く卵かけご飯を!」と念じながら過ごしたわけで。
その間、今すぐ食べたい卵を握りしめて過ごしたわけで。
あの「おあずけ時間」こそ最高のスパイスだったのではと思うのです。

そこで、30分間温めるのが難しい人のため、簡易版・究極の卵かけご飯のレシピもやってみました。



作り方はさらに簡単です。
①卵をご飯に割り入れ、よくかき混ぜる。
②レンジで20秒チンする。
黄身が破裂する可能性があるので、チンする前によく混ぜておきましょう。

「温かい方が味を感じやすい」というのであれば、理にかなった作り方です。




卵を割り入れ、よく混ぜました。



この時の温度は42℃。卵の表面温度は14.9℃でしたので、ご飯の温度が少し下がった結果かもしれません。

これをレンジでチン!
20秒ですから、あっという間です。



完成。温度は45.5℃。この+3.5℃が明暗を分けるのでしょうか。
ちなみに、レンジから出した卵かけご飯と対峙した時のテンションは至ってフラット。
30分間手で温め続けた時ほどの高揚感はありませんでした。

いざ、実食。

おいしい!
確かにおいしい。卵の味が濃い気がします。

ただ、30分間手で温めた方の卵かけご飯に比べると、感動がやや薄いかもしれません。
食べるスピードもふつう。確かにいつもよりホカホカでおいしいとは思いました。
しかし、あの「細胞レベルでおいしさを噛み締めている」感じには及ばないかも。

すべて本来の持ち味をこわさないことが料理の要訣である by魯山人

今回得た一番の学びは、「食べる前に待つ」ことです。

何でも手軽においしくできる今こそ、「手軽ではない一手間」が、こんなにも食べることの喜びを教えてくれるのだと感じました。
卵のことを考え、卵かけご飯を思い描きながら、「おいしい卵かけご飯が食べたい」一心で待った時間こそ、卵の持ち味を壊さない最良の調理だったのかもしれません。

「手で30分温める」という作り方は、無駄や手間を嫌う現代人に大切なメッセージを与えてくれます。
お時間のある方はぜひ、魯山人考案の卵かけご飯の究極ぶりをご体感ください。


16種類のTKGstyleも学べる、日本たまごかけごはん研究所のサイトはこちら!
https://www.japan-tkg.jp

メイン画像/photoAC

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