農家仲間との出会いが、自分を変えたしばらくして、関根さんの心境に変化が訪れます。きっかけは、同世代の仲間との出会いでした。
関根さんが住む新潟市白根地区は、桃、梨、ぶどう、洋梨の栽培が盛んな地域。
「周りには農業大学校を卒業して、知識も経験も豊富に積んできた同世代の若者がたくさんいました。農業に対する姿勢も一生懸命で、やる気のない自分とはまるで違う。そんな人たちと交流していくうちに、何となく農業をやっているのって、自分が望む生き方じゃないなって思ったんです」(関根さん)
仲間と話すうちに、農業へのイメージも変わったといいます。
「農家の方って、すごく勉強してるんですよ。作物を栽培するためのマニュアルはありますが、その中で創意工夫もしなきゃいけない。とにかく、みんな頭を使って、考えながらやっているということに気づかされたんです。それって大変なことですが、だからこそ、おもしろさがあると思いました」(関根さん)
関根さんがとくに興味を持ったのは、果樹栽培でした。
「野菜や米は作付けして収穫したら、そのシーズンはいったん完結します。それに対して果樹は、畑に木を植えてから毎年土作り、枝作りをして、5年後、10年後にその結果が出るんです。ずっと先の未来を見据えて、そのための仕事を、今やる。そして少しずつ自分の理想に近づけていく。そんなところに、カッコよく言えば、ロマンを感じました」(関根さん)
「自分なりの農業」に挑戦したい。それがアボカドだった実家では、桃の栽培をしていましたが、関根さんはあえて、他の作物に挑戦したいと考えました。
「せっかくやるなら、自分なりの農業をやってみたかったんです。知識も経験もないまっさらな自分だからこそ、イチから何かを始められるんじゃないか。そうすれば、もっとおもしろくなるんじゃないか、と」(関根さん)
2014年の末、関根さんはどの作物を栽培するか、インターネットで情報収集を始めます。目をつけたのは、輸入量が多く国産が少ない作物。ここに販路拡大の可能性を感じたのです。
「まずは、輸入量の多い作物を検索しました。バナナ、パイナップル、グレープフルーツ、オレンジ、キウイフルーツ…と、それぞれ一つずつ、栽培方法を調べていき、たどりついたのが、アボカドだったんです」(関根さん)
アボカドは熱帯のイメージが強い作物ですが、意外と寒さに強く、品種によっては、マイナス6℃まで耐えられることが分かったそうです。
しかも、味のいいアボカドを育てるには昼夜の寒暖差が必要で、本場メキシコでも、名産地とされているのは標高2000mの高地。昼間は暖かく、夜は10℃前後になる地域でした。
「日本ではアボカドの旬は、10~1月あたりになります。新潟県では10月になると、夜間は10℃を切りますが、日中は、ハウスの中は暖房を使わなくても30℃くらいまで上がります。ハウスを利用することで、収穫前の味をのせる時期に、寒暖差をつけられる。だったら、新潟の寒さもメリットになるんじゃないか、新潟の気候を生かした栽培ができるんじゃないか、と考えました」(関根さん)