2022.08.16

食べる

【生産者インタビュー】東京には新鮮なアスパラがない…だったら俺が!「東京アスパラ」で勝負する農家の挑戦

アスパラガスの産地といえば北海道が有名ですが、じつは都内でも大規模に栽培している方が。それが練馬区にある「白石農園」の白石秀徳(ひでのり)さんです。白石さんは江戸時代から続く農家の長男。2018年に就農し、都内では珍しいアスパラの栽培を始めました。「東京アスパラ」ブランドを立ち上げ、福祉作業所にも仕事を任せるなど新しい試みの真っ最中。そんな白石さんの活動の原動力とは…。


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ようこそ「白石農園」のアスパラ畑へ



西武池袋線の石神井公園駅から車で20分ほどの場所に白石農園はあります。その一角に立ち並ぶビニールハウスの中がアスパラの畑です。中の様子はというと……。



わっ、これが畑?

「みなさん最初はビックリしますね(笑)。普通の畑のイメージとは、ちょっと違いますよね。今は、春先に出荷する“春アスパラ”の収穫を終え、6~10月に出荷する“夏アスパラ”を育てています」(白石さん)



「たくさんの葉が茂っているように見えますが、これは“擬葉(ぎよう)”といって、茎が育って葉のようになったもの。春に芽を出したアスパラの一部を収穫せずに残しておくと、このように成長します」(白石さん)



「擬葉が茂ると、花が咲き、赤い実もなるんですよ」(白石さん)



アスパラにも花や実が……というのは、意外でした。ところで、肝心のアスパラはどこに!?



「ここ、株の根元から出ています。アスパラはたけのこのように地下茎で伸びて、芽を出すんです」(白石さん)



「ちなみに、“はかま”と呼ばれる小さな三角形が、ホンモノの葉です」(白石さん)

収穫したてのアスパラは、格別のおいしさ!

白石農園では、7・8月の土日祝の10:00~12:00に収穫体験をおこなっているそう。(詳細は、農園のHPをチェック!)
収穫の仕方を教えてもらいました!



「体験にきたみなさんには、目印のついた棒をお渡しします。棒をアスパラに添え、基準の長さを超えたものを収穫してください」(白石さん)



アスパラの根元を、土ギリギリのところで切ってみると…なんとみずみずしい切り口!



「収穫したてのアスパラは、切り口から水分がしたたるほど。そりゃもう、格別のおいしさ。さっと茹でてマヨネーズが最高ですね」(白石さん)



新鮮なアスパラの味を届けたい!

白石さんのアスパラへの熱い思いが伝わってきますが、そもそもどうして、アスパラの栽培を始めようと思ったのでしょうか。

「都市部で出回るアスパラは、遠方で栽培されたものが多い。どうしても、収穫から日が経ってしまいます。そんな中で、収穫したてのものは需要があるはずだし、“東京育ち”というのは、ブランドになると思ったんです」(白石さん)



この思いは、大学を卒業してから5年ほど、青果市場に勤めていた経験から得た感触でもあるそう。

「アスパラは株を植えたら10年は収穫できます。管理にもさほど手がかかりませんし、栽培面積あたりの収穫量も多いんです。栽培方法を教えてくれるツテがあったことも後押ししてくれました」(白石さん)


早朝に収穫したばかりのアスパラ。きらきら!

東京産だからこそ都市部の人にも新鮮なアスパラが届けられる――その魅力を通して地域と関わり、都市農業への理解を深めてもらえたら、そう白石さんは考えていたのです。

クラウドファンディングで資金集め!

アスパラ栽培に乗り出した白石さん、ご自身は栽培と収穫に専念し、その後の選別や出荷作業は地元の福祉作業所に委託する計画を立てます。

「アスパラは、選別や発送がそれほど難しくありません。丁寧に仕事をしてくれる福祉作業所の方に向いていると思ったんです。農地が少ない都市部で農業を続けるには、地域の方の理解が必要です。売上の一部を福祉作業所の運営費やそこで働く知的障がい者の方々の賃金に充てることで、地域貢献ができればと思いました」(白石さん)


収穫後、福祉作業所に運び込まれるのを待つアスパラ。

福祉作業所に設置する機材の購入費用は、クラウドファンディングで調達することに。

「資金を集めるだけでなく、応援してくれる人がどのくらいいるのかも知りたかった。結果的には、練馬区のみなさんを中心に、目標の2倍もの支援をいただくことができました。本当にありがたかったですね」(白石さん)



支援してくれた人にお礼として届けたアスパラも大好評。

福祉作業所には、収穫を終えた10月以降の畑の整備も依頼するなど、地域との連携も深まり、そのことを知る人々も増えていきました。

食のSDGs!廃棄する茎を「ほうじ茶」に

白石さんが収穫したアスパラは、福祉作業所で茎を切り落とし、出荷に適した長さに調整をします。切り落とした茎は、白石さんによると「廃棄するしかない部分」だったのですが、なんと地域の事業者の力を借りて、「ほうじ茶」に生まれ変わることに!


アスパラの茎を乾燥・焙煎させて作った「翠茎茶(すいけいちゃ)」。

「白石農園が、直接製造・販売に携わっているわけではないですが、使われているのは紛れもなくうちのアスパラの茎です。ノンカフェインなので、子どもからお年寄りまで飲めますし、コーンのような甘みがあっておいしいですよ」(白石さん)

地域の人々と積極的に交流しながら「都市農業を価値あるものにしていきたい」と語る白石さん。



わたしたちの命は、食あってこそ。直接的な交流はできなくても、購入というかたちで応援することもできます。
白石農園のアスパラは農園のホームページから購入も可能。ぜひ、この機会に味わってみてくださいね。

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白石農園

白石秀徳(しらいし・ひでのり)さん

大学では農学を専攻、青果市場にて経験を積んだ後、約350年続く白石農園の後継者として就農。両親と家族が年間30~40品目を栽培する農園において、自身は3000株のアスパラガスの栽培に従事。農福連携、体験農園の実施など地域との連携を深めながら、都市農業を持続可能なものにすべく奮闘中。。

●ホームページ
https://shiraishi-farm.com/
●Instagramアカウント @shiraishifarm
https://www.instagram.com/shiraishifarm/

写真/津田雅人 料理・お茶写真/石塚修平 取材協力/JA東京あおば

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