2021.07.03

働く

“行列ができる自販機トマト”を育てているのは、どんな人? 練馬区の農園を訪ねてみた

東京都練馬区に〝行列ができる自販機トマト〟があると話題です。作っているのは、「加藤トマトファーム」代表の加藤義貴さん。就農して5年目の若き農業者です。トマト作りへの思いを聞きました。

朝8時半から販売スタート。“100袋買い”する人も!

東京都練馬区の住宅街。白い外観の「加藤トマトファーム」のハウス前には、真っ赤なトマトが入った自販機が。





ハウスで収穫したてのトマトを、自販機に移し替える加藤さん。



次々にお客さんがやってきます。

「収穫時は、毎朝8時半から自販機での販売をスタートし、売り切れたらおしまいです。販売開始前から行列ができ、8時半過ぎには完売になってしまう日も。ほんとうにありがたいですね」と加藤さん。



お客さんは、リピーターがほとんど。「近所の方や、地域外から車でやってくるお客さんもいらっしゃいます」(加藤さん)。



中玉の『フルティカ』(写真左)はすっきりした甘さ、ミニトマトの『トマトベリー』(写真右)は酸味と甘みのバランスが抜群だそう。

「どちらも1袋300円(税込)で、なかには100袋買ってくださる人もいます」(加藤さん)。

なんと!100袋も?

「まとめ買いして親しい人に配ってくださるそうです。袋には農園情報を記したQRコードが印刷してあって、その情報を見て新しいお客さんが買いに来てくださることもあるんですよ」と加藤さん。



この日も売り切れたトマトを補充するため、急いで袋詰めをする加藤さん。トマトの人気ぶりがわかります。

光がたくさん注ぎ込むハウスで、甘いトマト作りにこだわる! 



加藤さんは、江戸時代から300年続く農家の長男。お父さんの義松さんは「日本で初めて体験農園を始めた」ことで知られる方。現在も、農地の大部分を体験農園として地域住民に開放しているそう。

「就農にあたり、ぼくが任されることになった農地は10アール。住宅街にある限られた農地で生産性を上げるには、ハウスでトマトを育てるしかないと思ったんです」(加藤さん)



加藤さんはトマトを「養液栽培」という方法で育てています。自動化されたシステムのもと、土を使わず、肥料を水に溶かした培養液をトマトの根に直接与えています。



栽培でもっとも心を配るのが「温度の調節」。

「トマトは南米・アンデス山脈の高原地帯が原産の野菜で、暑さが苦手。30度を超えると色が悪くなったり、元気がなくなってしまうんです」(加藤さん)。



甘いトマトを作るには、しっかり光合成がおこなわれることもたいせつ。

そのため加藤さんのハウスは約5mと天井を高く作り、たくさんの光が降り注いでいます。



「しかし、5、6月は気温が上がりすぎてしまうのが難点。冷房を入れるだけでは追いつかないので、カーテンをつけたりミストをまいたり工夫しています」(加藤さん)。

樹上で完熟したところを収穫し、ハウス前の自販機で販売する加藤さんのトマトは、真っ赤でみずみずしく、甘みもしっかり。



栽培へのこだわりが、行列を呼ぶおいしいトマトの秘訣なんですね。

畑に人を入れることで、農業を身近に感じてほしい

加藤さんは、「農産物をただ売るだけでは農業への理解は得られない、地元の人たちにもっと農業を知ってもらうためには畑にどんどん人を入れたほうがいい」と考え、収穫体験もおこなっています。

「トマトが実っているところ、完熟のおいしさを消費者のみなさんにアピールしていきたいですね」(加藤さん)。

トマトの収穫は6月で終了してしまいましたが、加藤さんは、ほかにもいろいろな収穫体験を企画しています。

7月には、使われていなかった農地にトウモロコシ約1万5000本を植えた巨大迷路を作り、期間限定で訪れた人に迷路とともに収穫も楽しんでもらう予定。

日時など詳細は、「加藤トマトファーム」のインスタグラムや特設ホームぺージでチェックしてくださいね。

加藤トマトファーム

加藤義貴さん

東京都練馬区にある8.6アールのハウスで、ミニトマト、中玉トマト、大玉トマトを栽培。28歳のときに就農して今年で5年目。収穫したトマトは、11月から6月にハウス前で毎朝8時30分から販売(なくなり次第終了)。甘くてこくのあるトマトは、朝から行列ができるほどの人気。このトマトを材料に作ったドレッシングやトマトようかんも販売している。
ウェブサイトはhttps://kato-tomato-farm.jp/

写真/菊地菫 取材協力/JA東京あおば

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