2022.09.17

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【生産者インタビュー】東京でわさび栽培!?鮮烈な香りに魅せられ異業種から転身の「わさびブラザーズ」に密着

東京都奥多摩町に移住し、わさび栽培やわさびツアー、キッチンカーによるわさび食堂など、わさびにまつわる活動を精力的に行う角井仁さん・竜也さん兄弟。「わさびブラザーズ」と呼ばれ地域で親しまれる彼らは、もともと別の道を歩んでいましたが、奥多摩のわさびに惹かれ、2人一緒にわさび農家になりました。わさびの魅力を世界に発信したいというわさびブラザーズに、わさびへの熱い想いを聞きました!


【収穫ツアー体験ルポ】東京の山奥でわさび収穫!?ハイキングがてら「奥多摩わさびツアー」行ってきた!

異業種を経て、わさび農家になることを決意!

清らかな水が絶えず流れる場所でしか育たない、わさび。奥多摩町では、古くから清流を活かしたわさび栽培が行われていますが、その栽培の難しさや相次ぐ自然災害、高齢化などから生産者は減少の一途を辿っていました。



そんな状況を知り、“おいしい奥多摩のわさびをもっと知ってもらいたい”、“日本原産のスパイスであるWASABIの魅力を世界に届けたい! ”と活動するのが、わさびブラザーズこと角井仁さん・竜也さん兄弟です。

「わさびは世界中で注目され、各国で専門店が出来るほどの“超”話題の食材なんですよ! 」と仁さん。



兄の仁さんは、「キャニオニング」という渓谷下りのプロとして活動。国内やニュージーランドなどでアウトドアガイドを10年ほど務めてきたアウトドアの専門家です。そんな仁さんが、ガイドとして奥多摩エリアを拠点にしたことが、わさびを知るきっかけとなりました。

「人づてにわさび農家を紹介してもらって通ううちに、わさびの魅力にすっかりハマってしまって。気がつけばわさび農家になっていました(笑)」(仁さん)



一方、わさびのイラスト入りタンクトップがトレードマークの弟、竜也さんは美容業界の出身。「ヘアメイクを10年やってました」(竜也さん)

華やかな美容業界から離れ、3年かけて全国を巡り歩いた竜也さん。北海道から本州まであちこち車で移動しながら、じゃがいもの収穫や海苔の養殖などの手伝いをしたといいます。



「素晴らしい生産者の方々に出会い、農作物や海産物を収穫する楽しさを知りました。でも、第一次産業はどこも後継者不足。収入が安定せず生活の基盤が整わないと若い人は参入しにくい、という声を聞く中で、兄が『わさび、すごいぞ』と言い始めて。わさび栽培に取り組んで、“第一次産業でも稼げる”というモデルケースを作ってみたい、と思ったんです」と竜也さん。



ヘアメイク出身とはびっくり。でも、カゴを担いでもサマになる竜也さんのルックスは、「美」に関わってきた経歴を知ると納得です。

台風被害に負けない! 只今わさび田を修復中

江戸時代には徳川将軍家に献上されるなど、長い歴史を誇るわさび産地・奥多摩では、山の中の傾斜を活かした伝統ある栽培法が受け継がれてきました。しかし、現在のわさび農家は2~3戸と、かなり少なくなってしまったそう。

「今では町の人ですら奥多摩のわさびを食べる機会がないほど。このままでは奥多摩のわさびは途絶えてしまう、そんな危機感を感じました」(仁さん)



2018年、奥多摩のわさび栽培を未来に残したい、と仁さんと竜也さんはこの地に移住し、わさび栽培をスタートしました。

奥多摩のわさび田は、山の傾斜を利用した棚田状のもの。手積みの石垣によって作り出された美しい景観が特徴です。



しかし、2019年10月に台風19号が発生。記録的な大雨によって山の中にあるわさび田が豪雨で流され、甚大な被害を受けました。

「奥多摩のわさび田に欠かせない石垣は、台風でほとんどが崩れてしまいました。修復するにはまた一から石を積み上げるところから始めなければなりません。山を登り、石を運び、積み上げるという作業は、高齢化した奥多摩のわさび生産者にはかなりの重労働。でも、僕たちが手伝えばきっとできる! と、わさび田を借り、手積みで石を積み直すところから始めました」(竜也さん)



わさびブラザーズが現在、管理している畑の合計面積は1ha(ヘクタール)ほど。



「崩れている部分を2人で積み直し、2年以上かけてここまできました。その中でもいちばん景観が良いわさび田を見てもらいたいと思って、わさび収穫体験ツアーを行い、参加者のみなさんを案内しています。まだまだ直している最中なので、これからも頑張らないと」(仁さん)

奥多摩を訪れたら、本物のわさびを食べて~!

奥多摩で活動を始めて今年で5年目。わさび栽培について初心者だった2人ですが、文献を調べたり、先輩のわさび農家に聞くなどして試行錯誤を繰り返した結果、安定的に収穫できるようになりました。わさび栽培だけでなく、様々な活動を通してわさびの魅力を広めたい、と竜也さんは話します。



「奥多摩はわさびの町ですが、地元のわさびを食べられる店が少ないんです。。そこで、わさびの味を手軽に味わって欲しいと、キッチンカー・わさび食堂を始めました」(竜也さん)

わさび食堂は、週末を中心に奥多摩駅前に出店。「わさび丼」(700円)や「わさポーク丼」(900円)の他、捨てるところのないわさびの魅力を知ってもらおうと、茎や葉もたっぷり入れたWASABIいなり(2個 300円)や、わさび漬け(酒粕入り 500円)を販売しています。現在は、銀座や池袋などの繁華街に出店することもあるそう。


わさび食堂は仁さんと仁さんのパートナーのももさん、竜也さんの3人で仲良く営業中!

大自然を満喫できる奥多摩はハイキングなどのアウトドアに訪れる人が多く、「山歩きを楽しんだ後は、わさびで元気をチャージして帰ってほしいですね」と仁さんは微笑みます。


2人が企画するわさび収穫体験ツアーでも、すりたてわさびが味わえるわさび丼が振舞われます!

最後に、わさび愛溢れる2人に、今後の夢を聞きました!

「僕らは、ビジネスモデルを考えたり、外部に向けてPRするなど、攻めていくのが得意です。奥多摩の人達が守ってきたわさびを、世界中の人に知ってもらいたい。パリ五輪開催時には、パリでわさび丼を売るのが今の目標です! 」(竜也さん)



エッフェル塔の下でわさび丼!? この2人なら、きっと実現してしまうに違いありません。これからの、わさびブラザーズに注目です!



TOKYO WASABI

角井仁さん・角井竜也さん

神奈川県横須賀生まれ。兄、角井仁さん、弟、竜也さん。東京都奥多摩町の山の中にあるわさび田でわさびを栽培する。2020年3月から「わさびブラザーズ」として、「TOKYO WASABI」の活動を本格的に始める。伝統ある奥多摩産のわさび栽培を守りながら、その魅力を世界に広げていくことを夢とする。1日1組限定のわさび収穫体験、BBQスペースのレンタル、土日祝日を中心にJR青梅線奥多摩駅前でフードトラック「わさび食堂」を出店。詳しくはウェブサイトをチェック。https://tokyowasabi.com/

写真/菊地菫 取材協力/JA西東京

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