2023.07.28

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【農業女子インタビュー】ある時は農業法人代表、ある時は一児の母、ある時は野菜の先生!?パワフル農家に密着!

にんじんの一大産地、愛知県碧南市でにんじんや玉ねぎを生産する農業法人棚久。棚久は、生産者であると同時に、野菜教室の講師などにも事業として取り組んでいます。その原動力となっているのが、代表を務める永井千春さん。一児の母でありながら、法人の代表として会社を切り盛りし、野菜教室の講師も務めています。そのバイタリティの源はどこにあるのか⁉パワフルな永井さんがこれまで歩んできた道のりを聞きました。

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“農業”よりも“食”への興味が強かった学生時代



永井さんの家は昭和初期から3代続く農家。
父・是充さんの代からは、にんじん栽培に力を注ぐようになり、碧南市のブランドにんじん「へきなん美人」の立ち上げにも携わったそうです。
そうした流れを受け、4代目として永井さんも就農するかと思いきや、自身はその当時「農業というよりも“食”に携わる仕事がしたかった」と語ります。

大学在学中から、“食”への思いを募らせ、管理栄養士の資格の勉強をしながら、カフェのキッチンスタッフとして働き始めた永井さん。

その職場で彼女を待ち受けていたのは、驚きの光景でした。

「納品される食材のほとんどが、鮮度のあまりよくないものだったんですよね。家では新鮮な野菜ばかりを目にしていたので、驚いてしまったんです」(永井さん)

少しずつ「家に帰って、質の高い野菜作りに携わりたい。という意識になりました」という永井さん。
それから間もなく、地元にUターンし、就農に向けたチャレンジの日々が始まります。

ブランクを嘆くより自分の興味に目を向けた



就農を決めた永井さんは、家の仕事を手伝いながら農業研修を受け、着々と準備を進めていました。
その一方で、地元で同世代の農家を継いだ人たちを見て「同じようにはできない」と感じたそうです。

「男性が多かったんですが、力仕事が出来て、トラクターもしっかり乗れて…っていう姿を見て、同じようには出来ないなと。わたしはその時点で10年くらいブランクがありますから、畑の知識や経験も足りないですしね。でも、『追いつくのは難しくても、食が好きな自分にしかできないことがあるはず』と、考え方を切り替えたんです。そこで野菜ソムリエを目指すことにしました」(永井さん)

そう決めた永井さんはすぐに行動に移し、野菜ソムリエの資格を取得。そして、永井家の主力作物であるにんじんの魅力を多くの人に知ってもらうために、食べ方や保存法などを紹介するワークショップを開催し始めました。
また、料理人とコラボして、消費者に懐石料理やフレンチでにんじんを味わってもらう…という企画も実現。



永井さんの食への興味が、農業と食とを楽しく橋渡しする、新たな取り組みとして花開いたのです。

「ワークショップで、みなさんが知らない野菜の側面を知って楽しんでほしい。毎回、参加したみなさんが生活の中で活かしてくれたらいいなと思って開催してます」(永井さん)

「野菜のことを伝えたい」思いがフィールドを広げた



2018年、昭和初期から代々農業を営んできた永井家は、農業法人となる道を選び、株式会社棚久を設立。代表に永井さんが就任しました。
その事業内容には、主力作物のにんじんや玉ねぎの栽培に加え、「野菜イベントの企画運営」や「野菜教室等の講師」も明記されています。
会社の公式サイトの設計は、永井さんのアイデアによるもの。
消費者目線に立って作られていて、にんじんの味の違いや食べ方など、会社で生産している野菜の魅力が伝わる内容になっています。

こうした新しいチャレンジを続ける永井さんのバイタリティは、一体どこから湧いて来るのでしょうか?

「跡継ぎとしての責任感もありますが、一番大きいのは『野菜を通して“食の楽しさ”を絶対に伝えたい』っていう強い思いがあるからだと思います。農業をやっていると、大変じゃないことなんてないんですよ(笑)。確固たる目的があるからこそ、いろいろな問題が出てきても乗り越えられているのかもしれません」(永井さん)

野菜の情報を発信する取り組みが実を結び、企業などからコラボレーションの声がかかるようにもなりました。

「みりんメーカー様と料理教室を開催したり、イベント出店に誘ってもらったりすることも増えました。自分にとっても学びの機会になりますし、地域との繋がりも増えてうれしいですね。活動を通じて碧南市がもっと好きになりましたし、地域に貢献できる喜びも大きいです」(永井さん)



生産者として、野菜教室の講師として、活躍の場を広げる永井さんですが、一児の母でもあります。
今後について尋ねてみると、会社の代表としての頼もしさの中に、ママの一面が垣間見えました。

「自社の生産物を生かして楽しめる部分をもっと増やしたいですね。そのためには売上を伸ばさないといけないので、体制を整えるとか販路を広げるとかの課題をひとつひとつクリアしていけたらと。それと、個人的には時間の使い方を見直したいです。子どもとの時間を大切にしたいという思いも強いので、時間をもっと効率的に使うことが出来たらなと考えています。今日も立ちながら食事しちゃったな~っていう時もあるので(笑)」(永井さん)

仕事に育児にパワフルな永井さんの活動に、今後もますます注目です!

株式会社棚久

永井千春さん

にんじん・玉ねぎの一大産地、愛知県碧南市で4代続く農家の生まれ。碧南市のブランドにんじん・玉ねぎを栽培する。「野菜のことをもっと知ってほしい」という思いから、野菜ソムリエ上級プロ、管理栄養士の資格を活かしたワークショップも開催。野菜の見分け方や保存法を学んだり、フレンチや懐石料理で品種ごとに食べ比べたりと、多彩な企画が参加者に好評。一児の母であり、最近は野菜のおいしさを子どもにも伝えようと奮闘する日々。

株式会社棚久 HP 
https://vegetanaq.com/

取材協力/JAあいち中央

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