2023.01.02

働く

【農業女子インタビュー】若干23歳でゆず農園を継いだ彼女。「畑にいる時間が大好き」と話す一方、マルチな才能で叶えた夢とは…

祖父から受け継いだ石川県金沢市の農園で、金沢ゆずをメインに、加賀野菜のへた紫なすや白ねぎを栽培する多田礼奈さん。農園を受け継ぐやいなや、持ち前のバイタリティで農業はもちろん、ゆずをテーマに祭りを開催したり、規格外野菜を使ったスイーツ&弁当店をオープンしたり、はたまた、伝統工芸作家とコラボしたり、と八面六臂の活躍ぶり!パワーの源はいったい…詳しく話を聞きました!

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就農のきっかけは…祖父の一言

23歳で就農するまで、飲食店で働くなど、農業とは全く違う仕事をしていた礼奈さん。休日に農業を営んでいた祖父母を手伝う中で、農家という職業について思いを巡らせるようになったと言います。

「そもそもはリフレッシュがてら祖父母を手伝っていたのですが、だんだんと農業っていいなあ~と思うようになって。そんな時に偶然『AI化が進むと、将来なくなる職業は…』というニュースを見たんです。農業はどうだろうと考えた時、人の目と手で判断することが多い職業なので、絶対になくならないし、食を支えるという意味で、なくしちゃいけない!と強く感じました」(礼奈さん)



「農業をやりたい」という思いを抱きながら、「一度継いでしまったら簡単には辞められない」と、あと一歩を踏み出せずにいた礼奈さん。背中を押したのは、その頃病気で畑に立つことができなくなった祖父・清さんの言葉でした。

「ある日じいちゃんに、冗談混じりに『お前、畑しんか?(しないか?)』って聞かれたんです。そのとき、自然と『やるやる』と答えた自分がいて。じいちゃんが守ってきたものをなくしたくない、と考えていたので、祖父に言ってもらえて決心がつきました」(多田さん)



清さんはすぐさま金沢市の運営する農業大学校のパンフレットを取り寄せるなど、礼奈さんが就農するにあたってサポートしてくれたそう。

「わたしが農園をやる、と伝えたら、じいちゃんは『そしたら農業大学校行かんなん(行かないと)』って言って。入学受付もしてない時期なのに、パンフレットをもらってきて(笑)。気合いが入っていましたし、なによりとても喜んでくれました」(多田さん)



ところが、礼奈さんが農園を引き継いで間も無く、清さんは他界。遺志を受け継ごうと、農園の名を清さんの名前を冠した『きよし農園』と命名しました。

就農して1年目でゆずイベント開催~!

就農してまだ間もないころ、加工で余ったゆず果汁の行き先がなく、困っていたという礼奈さん。しかし、持ち前の行動力でこの問題を解決します!

「果汁が余ったのは需要がないというよりも、知られてないからだと思って。知名度を上げるためにゆずをテーマにしたお祭りをしようと思いつきました」(礼奈さん)

そうして2017年に開催されたのは『ゆず香るん祭り』。評判を呼んで、以来コロナ禍で中止となった年を除き、毎年開催しています。


イベントの出店条件に「金沢ゆずを使った商品を必ず1つ販売すること」と掲げ、ゆずごしょう鍋、ゆずいなり、ゆず足湯など、ゆずの香りに包まれた会場は例年大盛況!

「地元の菓子店やレストランに出店をお願いして、ゆずを使った商品を販売しました。ゆずの新たな使い方も発見できましたし、出店者のお客さんも来場したので大勢の集客につながりました!」(礼奈さん)

新型コロナウイルスの影響で2020年から2年間は中止されていた「ゆず香るん祭り」でしたが、2022年には、規模を縮小し3年ぶりに開催。以前の盛り上がりを取り戻すことを目指し、今後も開催を予定しています。

規格外野菜を使ったスイーツ&弁当店をオープン!



礼奈さんの活躍は、イベントを立ち上げるだけにとどまりません。

地元農業の活性化に貢献したいと、2022年には念願だったお菓子や弁当を扱う「Siii(シー)」を金沢市にオープン。近隣農家から規格外の野菜などを買い取り、それらを使ったタルトやジェラート、お弁当などを販売しています。



「地元農産物をおいしくてかわいいスイーツやお弁当にすることで、『使われている野菜も果物もおいしい!全部金沢で育ったものなんだ!』って、少しでも興味を持つきっかけになればいいなって。それにこうした加工品が売れるようになると、農家から規格外品も多く買い取れて、地元の農家を支えることにもなります」(礼奈さん)

今後は、お店で農作物を買い取り、ブランド化して流通させ販売先を増やしたいという目標も。礼奈さんの地元農業への想いとアイデアの豊富さにただただ圧倒されます…!



農業×伝統工芸のコラボも!

さらに、「もともと農業・飲食・工芸やアートに興味があった」という礼奈さんは地元の友禅染作家とコラボ。ゆずから染料を作るなど、活動の幅は業種をも超えています!

「農業を通してアートとか工芸っていう部分もつながりたいと、就農したころから考えていて。友禅作家の方に頼んで、植物から染料をとる草木染めで、ゆずの葉っぱから染料をとって、のれんを染めてもらいました」(礼奈さん)



こちらがそののれん!優しい色合いに、ゆずの新たな魅力を発見できますね。

「他にもレストランや地元の高校など、さまざまなところとコラボして、イベントや商品開発などをしています」(礼奈さん)



農業とは全く異なる分野とも積極的に繋がり、可能性を広げていく礼奈さん。

「飲食店で働いていたころ、ジャンルを問わずたくさんの方と出会い、話を聞きました。そういった経験が今に活きていると思うので、何事もいい経験になるなあ~としみじみ思いますね。祖父が始めたゆず、受け継いだ大好きな農園のために、これからも頑張っていきたいです」(礼奈さん)



最後に、幸せを感じる瞬間をたずねると…

「天気がいい日に広い畑の中で一人で作業してるときに、ニヤニヤするくらい嬉しくて…すごく自由だな、やりたいことできて本当に幸せやなぁって感じます。どうやったらおいしくなるんだろうって考えながら作業している時間も好きです」(礼奈さん)

なによりも農業が、畑が大好きだと礼奈さんは続けます。



「農作業が楽しいので、遊びに行きたいともあまり思わなくて。旅先でも知らない人の畑を『こうやって育ててるんや』って観察したりして、結局畑のことをずっと考えてます(笑)」(礼奈さん)

農業への愛と熱意に溢れる多田さん。今後の活躍に注目です!


きよし農園

多田礼奈さん

石川県金沢市出身。23歳で亡き祖父の農園を引き継ぎ、「きよし農園」代表となる。金沢ゆず、ヘタ紫なす、白ねぎを主品目とし、環境に優しく美味しい野菜作りを目指し農作業に励む傍ら、2022年5月には野菜の直売や地元食材を使ったスイーツやお弁当を提供するお店「Siii」をオープン。そのほかにも「金沢ゆず香るん祭り」の企画・運営や、他分野とのコラボなどを通じ、地域農業の発展のため幅広く活動している。

きよし農園ホームページ:https://kiyoshinouen.jp/
きよし農園インスタグラム:https://www.instagram.com/kiyoshinouen.reina/
Siiiホームページ:https://siii-seasonalfood.com/
SiiiInstagram:https://www.instagram.com/siii_seasonalfood/

写真提供/きよし農園 取材協力/JA金沢市

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