2022.01.13

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【東京で原木しいたけ栽培!生産者インタビュー】青梅市の森林を活かす農家の挑戦!【食べて応援SDGs】

今では数少ない、原木栽培という方法でしいたけを育てて36年の内沼秀夫さん。何もない土地を自ら切り開き、一からしいたけ栽培を始めました。「循環型農業を実践する原木しいたけこそ『オーガニックの王様』」と話す内沼さんは、現在、地域の人たちと一緒に、地元の木を使ってしいたけを育てることで、森を守る活動を始めています。

【画像を見る】原木しいたけ栽培でSDGs⁉青梅市の農家の挑戦



この日訪れたのは、年間1万人がきのこ狩りに訪れ、しいたけの炭火焼きを楽しむ大人気きのこ園、東京都青梅市にある「内沼きのこ園」です。

森の中でじっくり育つ、肉厚のしいたけ

青梅市の静かな里山の中に、内沼秀夫さん家族が営む「内沼きのこ園」があります。



36年間続けているのは、切り出したナラの木に菌を植え込み、森の中など自然に近い状態でしいたけを発生させる「原木栽培」。およそ2000坪(6600㎡)の敷地内で、年間3000~4000本の原木を用い、栽培を行っています。



これが、ナラの木に3㎝ほどの穴を空け、しいたけの種となる菌を植え込んだもの。



菌を植え込んで約7か月ほど経つと、木に菌が行きわたり、ポコポコとしいたけが発生してきます。



「しいたけ、と名がつくと、どれも同じだと思われがちですが、原木栽培のしいたけは、木の養分を吸いながらじっくりと育つので、肉厚になります。コリコリとした食感で、香りも最高ですよ」と内沼さん。



自然と共存…循環型社会をめざして

しいたけの収穫が終わった原木は、1か月ほど休ませると、原木の養分が蘇るそう。



何度か収穫を繰り返して役割を終えた原木は、薪として使われるほか、粉砕しておがくずとして再利用されるため、業者に引き取られていきます。



また、ボイラーで燃やした灰は、藍染め職人の手に渡り、藍を発酵させる原料となるそう。

「原木栽培は、本当にムダがない。循環型社会をめざすには、欠かせない農法です。農薬も肥料もいらない。きのこのことを知れば知るほど、原木しいたけこそ『オーガニックの王様』だと思うようになりました」(内沼さん)



森と人との距離を縮めたい

しいたけの日本全体の生産量のうち原木栽培が占める割合は、たったの8%。年々、生産者が減ってきているそうです。
その理由には、東日本大震災以降、原木の流通量の80%を占めていた福島県産の原木が手に入りにくくなったことが影響しているとか。

そんな状況を変えようと立ち上がったのが内沼さんです。



「青梅市には、市の面積の6割以上を占める豊かな森や林があります。原木が足りないのなら、地元の木を活かせばいいと思ったんです」(内沼さん)

内沼さんは、青梅市と地元の農林業機械製造メーカーと協力し、高齢化が進み荒廃した森林を整備し、切り出した原木をしいたけ栽培に利用し、森を保全する事業を始めました。活動は、現在3年目を迎えています。

ナラの木は18年ほど経つと、しいたけ栽培の原木に適した太さになり、伐採して利用することができるそう。



「伐採というと、緑を減らすイメージがあるかもしれませんが、逆に、伐採することで、切り株から新しい芽が出て、やがては3本の木となるんです」(内沼さん)



木が増えることで、緑が二酸化炭素を吸収して、地球温暖化を防いでくれたり、根をしっかり張ることで、大雨や地震などのさいの山崩れを防ぐことができたり、散り積もった落ち葉が腐葉土となって雨水を貯め込み洪水を防いでくれたりと、環境保全にも大きな役割を果たしてくれるのだとか。




また内沼さんたちは、地域の人たち向けに、青梅の森から切り出した原木を使って、家庭の庭で気軽にしいたけを栽培するための講習会を開いています。



「『原木しいたけを食べることが、森を守り緑を増やすんですよ』と伝えると、みなさん驚いて感動してくれます。これからも、森と人との距離を縮めていきたいですね」と、内沼さんは、力強く語っていました。



ぜひみなさんも、内沼きのこ園を訪れ、原木しいたけを味わいながら、青梅の自然を感じてみてくださいね。


内沼きのこ園

内沼秀夫さん

希少な栽培方法である原木栽培を始めて36年。ナラの木の原木を使って自然の力を利用しながら、しいたけ、舞茸、ヒラタケなど様々な種類のきのこを栽培する。秀夫さん、妻の幸恵さん、娘の幸紀さんと3人の家族経営。園内ではしいたけ狩り体験(予約制)や、収穫したきのこをすぐに焼いて食べられる炭火焼きコーナー、きのこをたっぷり使った料理を楽しめるカフェ「ぴるつ」もある。
営業時間10:00~17:00(カフェは、11:30~15:00) 火曜定休(6~8月は水曜も定休)
※季節によって、営業時間が異なることがありますので、ご注意ください。
http://u-kinoko.jp/index.html

写真/松木雄一 取材協力/JA西東京

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