突然ですが、当メディア「あたらしい日日」の背景には、月刊『家の光』という家庭雑誌の存在があります。その歴史は古く、大正14年の創刊。古い雑誌を眺めていると、面白い記事に出くわすことが多々あります。そこで、料理だったり家事だったり、古い記事のなかから興味深いものをピックアップ! そのアイデアを再現してみようと思います。当時の制作者の思いは違うはずですが、あらためて今見返すと“サスティナブルな思想”に通じるものがたくさんありました…。【画像を見る】同じ炊飯器で、硬さの違うご飯が炊ける!昭和レトロな方法なんです記事の内容は…日本人にとって食生活の根幹にある米。
おかずによっては良き引き立て役に、いざという時はメインも張れる究極のオールラウンダー。
シンプルな見た目とは裏腹に、銘柄や炊き方などで食感や味わいが変わる、実に奥深い食べ物です。
子どもは柔らかいご飯だとモリモリ食べてくれるけど、お父さんは硬く炊いたご飯の方が好き、なんて家族の好みの板挟みになることもあるのではないでしょうか。
毎日食べるものだからこそ、みんなの好みは聞いてあげたい!
その想いは昭和も令和も変わらないはず。その願い、叶えよう!
米の柔らかさは水加減で決まる→
水が多いところと少ないところに分ければ良いという安直な(⁉)考え今回の実験は至極簡単。
なんたって米を片方に寄せるだけですから。
いつも通り米を洗い、水加減も一緒です。
では、炊飯器のスイッチを入れる前にこうしてください。
左側が陸地、右側が海です。
陸地にお米を寄せるんです。
それにしても、本当にこれでご飯の硬さって変わりますかね?
炊いてるとき、中の水は沸騰するでしょう。そしたらこんな地盤ゆるゆるな陸地なんてすぐ崩れるんじゃないかと。
一抹の不安を覚えつつもスイッチオン!
ワクワクしながら炊けるのを待ちます。
炊き上がった米がこちら!おいおい、これは失敗じゃないか?
炊き上がりの見た目は一緒。と言うか、あれだけ陸地に偏っていたのですから、炊き上がりの米の嵩も左右で違っているはずでは?
わたしの予想では陸地だった左側が高く、海だった右側は低くなってるものとばかり。
まっ平になっているということは、やはり炊飯過程で混ざってしまったのでは?
同じく左が陸地だった米(硬いはず)、右が海だった米(柔らかいはず)です。
見た目にはわかりません。が、よそうとき手に伝わる感触が、心なしか右の方が柔らかかったような。
全ての答えは食べてみてから。
いざ、実食です!
まずは左の陸から。いつもの米って感じです。硬かろうが柔らかかろうが全ての米を愛するわたしとしては、「いつも通り今日もおいしいよ♡」と声をかけたくなるお味と食感。
しかしこのあと右を食べた瞬間、思わず立ち上がるほどの衝撃を受けることになろうとは…。
そして右の海を食べてみると…。
み、右の米、柔らかい!!
明らかに水分量が多い食感です。
「君、イメチェンした?」と声をかけてしまう食感。
安直でシンプルな考え方が最短ルートで答を出してくる良い例ですね。
ただし、「やった~!これで硬いご飯も軟らかいご飯も同時に炊けちゃうぞ!」と手離しに喜ぶことができないのがわたしの性分です。
改良すべき点があります。
硬い米が少ないという問題3合ほど炊きましたが、その全てを食べて思うのは、「硬いご飯、すぐ食べ終わっちゃったな」ということです。
図解するとこんな感じ。
つまり、硬いのは一部で、あとは普通か柔らかいか、なのです。硬いご飯は、最も少ない分量。
これでは硬い米を好む人が家で一番の食いしん坊だった時、対応しきれません。
何か良い方法はないか。わたしは昭和にはなかった現代ツール、インターネットを駆使しつつ調べました。
100均(ダイソー)で、おかゆとご飯を同時に炊ける「おかゆカップ」なるものを見つけました。離乳食用のおかゆ、寒い日々の朝粥に重宝されているようです。
でもわたしが炊きたいのはお粥じゃないのです。
水加減次第で柔らかい米を炊くこともできるでしょうが、小さなおかゆカップでは、今度は柔らかい米を好む人が家で一番の食いしん坊だった時の対応ができません。
この方法が一番理想に近かったのですが、ちょっと違うかなと判断しました。
しかし、カップを入れて炊くこともできるということは、炊飯器の中を仕切ったとしてもご飯は炊けるということです。
きちんと仕切れば、硬い米ゾーンが増えるかも!
というわけで、クッキングペーパーを使って仕切ってみました。完全に陸地と海の間に防波堤が立っています。
これで海が陸地に侵入することも、陸地が海に流れ込むこともないはず。
いざ、スイッチオン!
ドキドキの炊きあがりはこちらです。
下が陸地、上が海です。
やはり謎なんですが、どうして米の量がそもそも違ったはずなのに炊きあがりの米の嵩(かさ)が同じなんでしょう。不思議~!
いざ、実食!
今回は陸地の方の米は底の方から出しました。前回、底の方は普通の硬さになっていましたからね。
左が硬い方、右が柔らかい方です。
食べ比べてみると…、確かに違う!
右は圧倒的に柔らかいです。
左に関しては、右よりは硬い、という印象。
ちなみに、仕切りを外したらこんな感じになってました。
しっかりくっきり線が入っています。ちゃんと下の方まで仕切れていた模様。
米の嵩についての謎は残ったままですが、結果として「水が多いところと少ないところを作れば(炊飯器の中を陸地と海に分ければ)、硬いご飯、柔らかいご飯を同時に炊くことはできる」と言えます。
ネット上では、傾けて炊くだけ、という方も結構いらっしゃるようですが、仕切りを入れた方が明確に食感の違いを感じてもらえるかと思います。
わたしは今回身近にあったクッキングペーパーで仕切りましたが、調べてみたらアルミホイルを使うという人もいるようです。
お好みでお試しください!
おまけ①早炊きしてみた忙しい朝などには結構お世話になっている早炊き機能。
どうやって時短を叶えているのか調べてみたところ、普通炊きの場合には炊飯器が自動で行ってくれている「米に水を吸わせる(浸水)」工程と「炊けた米を蒸らす」工程が短縮されているらしいです。
この工程はお米の柔らかさに影響するようで、早炊きにするとそもそも少し硬めに炊けます。
全く問題なく炊き上がってます。
気になる食感もバッチリ。左は硬く、右は柔らかく炊き上がっていました。
おまけ②炊き込みご飯を炊いてみたお米がメインになる時。それは炊き込みご飯の時でしょう。
わたしは炊き込みご飯の時は、おかずはいらないくらいご飯ばかりを食べます(笑)。
もちろんこちらも問題なく硬軟炊きわけられています。
しかし、一つだけ問題点が。
炊き込みご飯の具が混ぜられない。
炊き込みご飯の場合、具は最後に載せて炊きますよね。
炊き上がったらかき混ぜて具を均等にするのが通常ですが、この炊き分けをするとご飯を混ぜることができません。
なので炊き込みご飯の場合は仕切りを入れて、硬い方、柔らかい方それぞれに具をのせ、炊き上がった後それぞれで混ぜることが必要です。通常よりも少し面倒になります。
用途によって使い分けることも家族の好みに寄り添うためだけでなく、たとえば炒飯を作る、お弁当に入れるといったお米は硬めが良いとか、家族の一人が体調を崩してしまったので柔らかいご飯が少しだけ欲しいなど、米の炊き分けは知っておくと便利な裏ワザだなと思いました。
それにエネルギー効率で考えても、目的の硬さ別に、いつもの半分の量ずつ2度炊きするよりは、全然いいですしね。
昔から変わらぬ家族への思いを込めて、今日も米をおいしく炊きましょう!