2022.03.05

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【生産者インタビュー】小松菜ってじつは伝統野菜なの⁉発祥の地・東京都江戸川区で栽培に励む農家に密着!

年中手軽に買え、豊富な栄養素とクセのない味わいでさまざまな料理に使いやすい小松菜。全国で生産が盛んですが、じつは東京都江戸川区が発祥のブランド野菜だってご存じですか? そんな小松菜を代々栽培している江戸川区の農家に、小松菜の特徴や栽培方法などを直撃取材! そこには、昔ながらの知恵や地域の特産野菜ならではの取り組みがありました。

【画像を見る】小松菜ってどうやって育てるの?東京都江戸川区の農家に密着!

徳川吉宗が名づけ親!江戸川のブランド野菜「小松菜」



小松菜は、別名「冬菜」とも言われ、冬の貴重な栄養源として、江戸時代から重宝されてきた青菜。江戸幕府8代将軍・徳川吉宗が、小松川村(現在の東京都江戸川区)に鷹狩に出かけたさいに、この青菜が入ったすまし汁を食べ、そのおいしさに感動したことから、「小松菜」と名付けられたとされています。



そんな小松菜発祥の地で代々小松菜農家を営んでいるのが、真利子忠篤(まりこただあつ)さん。江戸川と荒川の真ん中を流れる新中川の近くに、真利子さんの畑がありました。



閑静な住宅地の中にある広い敷地に、10棟ものビニールハウスが立ち並びます。





この日もほぼ毎日あるという集荷作業の真っ最中。素敵な笑顔で妻の妙子さんと出迎えてくれました。



「ここ江戸川区でとれた小松菜は、江戸川野菜というブランドで市場に出荷しています」と、妙子さんと二人で、手際良く小松菜を収穫していく忠篤さん。

まずは小松菜を1株ずつ抜いたら余分な小さな葉を取り…



軽く根の土を落として、ビニールテープで束ねていく作業の繰り返し。



出荷する束は、大体500gになるよう株が12本くらいを目安にしているそう。スーパーなどで、袋に入れて売られているものに比べると、2倍くらいはあります。



小松菜の種まきには、昔ながらのアレが大活躍!



「小松菜の旬は冬ですが、ビニールハウスなどを利用すれば、一年中栽培できます。うちでは、毎日収穫できるように1週間くらいの間隔で種を蒔き、少しずつ時期をずらしながら育てているんです」(忠篤さん)

別のハウスを覗いてみると…



まだ芽が出たばかりのものや…



10㎝くらいまで育ったものがきれいに並んで栽培されていました。



「ビニールハウス栽培だと、夏場は30日、冬場は70〜75日くらいで、収穫できるようになります」(忠篤さん)



時期をずらしながら、1つのハウスで年間に4回〜6回は収穫。1日あたり200束を出荷しているといいます。

「収穫した後の土は乾いているので、スプリンクラーで水をしっかりやってから、肥料を入れて耕します。その状態で数週間空け、ようやく種まきができるようになるんです」(忠篤さん)



この日は種まきの様子も見せてもらえることに。小松菜の種は直径2㎜ほどの小さな粒で、発芽しやすいよう緑色のコーティングがされていました。



専用の機械に種を入れ、足に「かんじき」と呼ばれる、昔ながらの道具をつけて種まきを開始。





機械を使うと等間隔で種を蒔くことができ、蒔いた後に土をかけてならしてくれるので、便利だそう。さらに、かんじきをはくことで、体重が分散され、やわらかい土に埋もれたり、足跡がついたりすることなく、きれいに種まきができるとか。

農業の現場では、新しい技術と昔ながらの知恵がうまく融合しているのですね。

江戸川区の公立小・中学校では、一斉に小松菜を食べる日がある⁉

真利子さんが育てた小松菜は、毎日葛西市場へ出荷されます。畑で束ねられた小松菜はいったんカゴに詰められ、根や茎、葉についた土を洗う作業に。



ホースでまず大体の土を落としてから…



全体を水につけて、ジャブジャブ洗います!



たっぷりの水でしっかり土を落としたら、水けを切り、段ボールに詰めていくのは妙子さん。



1箱に20束入りで、毎日10〜16箱を出荷しています。



子どもたちに地元でとれた野菜のおいしさを味わって欲しいと、葛西市場以外に、江戸川区内の5つの小・中学校にも、給食用として出荷。

「江戸川区の特産野菜として、学校ではあらゆるメニューに小松菜が使われています。日々の給食はもちろん、江戸川区内の公立小・中学校全校が一斉に小松菜を使った給食を提供する日まであるんですよ。なので、子どもたちからおいしいといってもらえるように、見た目や栽培のしやすさよりも、苦味が少なく食味のいい品種を選んで育てています」(忠篤さん)




また、真利子さんの畑には、毎年小学3年生が社会科見学で訪れるんだそう。

「小松菜が育っている様子を見る機会はなかなかないと思うので、子どもたちに、小松菜に興味を持ってもらうきっかけになれば、うれしいです」と、笑顔で話す真利子さんご夫婦。



手軽に買える小松菜ですが、東京都江戸川区が発祥の野菜と知ると、身近に感じる人も多いのでは? 小松菜は栄養も豊富で、毎日食べたい野菜の一つ。真利子さんおすすめの小松菜レシピもぜひチェックしてみてくださいね!

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真利子忠篤さん

小松菜 生産農家

「小松菜発祥の地」といわれる東京都江戸川区で小松菜を栽培。馬ふん堆肥や有機肥料を使い、苦味が少なく食味のいい品種を厳選して育てている。市場のほか、「子どもたちにもおいしい小松菜を」と江戸川区の5つの小・中学校の給食にも小松菜を出荷。

取材写真/石塚修平 料理写真/津田雅人 取材協力/JA東京スマイル

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